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張りつめた空気が工房を包む。背筋をまっすぐに伸ばしながら、息を止めて無心にろくろをひく。当代きってのろくろ名人・中村清六さんが大物づくりに打ち込む姿は、威厳に満ち、小柄な体を全く感じさせない。 「考え事? 一切ない。ただ頭に思い描いた通りに作り上げるだけ」。いったん、手を休め、そう答えると、再び厳しいまなざしで器の形を整えていった。ろくろ一筋の作陶生活は、まもなく70年を迎えようとしている。 中村さんが手掛けた深鉢やつぼなどの白磁の大作の特徴は、つや消しが施されていることだ。その淡い光沢は、器の造形とともに気品が漂い、磁器であるにもかかわらずほのかな温かみさえ伝わってくる。 有田の隣町、長崎県波佐見町生まれ。戦前、地元の実業公民学校に通っていた14歳の時にろくろを始めた。卒業後は同町内の窯元で住み込みで修業を重ね、戦中から戦後にかけては有田工業高で教師としてろくろの実習を指導した経験を持つ。 大物ろくろづくりの至宝と呼ばれた初代奥川忠右衛門氏(故人)との出会いが作陶生活の一大転機となった。作品づくりに専念するため教師を辞めた後、県陶磁器成形技能コンクールに作品を出品したとき、審査員を務めた奥川氏の眼力の鋭さに感銘を受け、すぐさま門をたたいた。「小物の清六さん」と呼ばれていた。中村さんが大作に取り組むようになったのも、奥川氏の指導によるものだった。 恩師奥川氏に学んだことを、一言で表せば「ものづくりの心」。湯飲み一つとっても、手にしっくりとなじむことをなにより工夫する。技術ばかりでなく使う人の立場も考えながら、形や技術、機能性といった「芸、技、美、用」を兼ね備えた物づくりを目指している。 中村さんは「最近、一年一年が楽しくなっている」と笑みを浮かべた。40、50代のころに比べ作品に力みがとれ、仕事に味が出てきたと実感するようになったからだ。15年前から取り組んでいるというつや消しの白磁が、その心境を物語っているようでもある。 今では、窯から大物を取り出すとうれしくて万歳したくなることもあるというが、「作品に自分が満足してしまえば駄目になる。階段は天に昇るように高く、まだまだこれから」と厳しい姿勢をのぞかせる。 「失敗しても嘆かないのが取りえでもあるし、体が動く限りいろんな勉強を続けたい」。80を超えてなお、中村さんの作陶にかける情熱はますます盛んになっている。 |
■高麗庵清六窯 西松浦郡有田町西部甲 JR有田駅から車で5分。 駐車場5台。展示場あり。 電話0955(42)2432 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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