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自宅の裏側にあるこぢんまりとした窯場の棚に、呉須(ごす)で染め付けた鉢やつぼがひしめき合うように置かれている。「公務員という立場上、作品を売って商売するわけにもいかないから、どんどん増える一方。鉢なんかほら、ああやって重ねて置いてあるでしょう」 坂本義弘さんは現在、県窯業技術センターの副所長を務めている。陶磁器の新商品開発を技術面で支援するための、業者の窓口を担う。 手掛けている磁器は、線彫りが施された素焼きに丸く切った目の粗い布を当て、呉須を染み込ませて絵付けしたもの。鉢だと内側と外側それぞれを布染めするのに丸一日を掛ける。青が強く浮き出る線彫りはあくまで呉須を引き立てるもので、主役にならないよう控えめに。綿密に計算された模様となっている。 染付の色合いは窯を開けてみないと分からない上、同じ色は二度と出せない。「呉須の色は無限。すかっとした感じの青を出したい」と語る。 作陶は、油絵を学んでいた佐賀大在学中に始めた。卒業後、焼き物を教わった恩師の紹介で、同センターの前身である県窯業試験場に就職した。当時、試験場で研究中だった白磁の井上萬二さん、和紙染めの江口勝美さんらを見て育ち「自分の作品をつくりたいという気持ちもあったから、時間を見つけては試験場の小屋で焼き物を作り、県展や美協展に出品していた」と振り返る。 初めは唐津系統の陶器を作っていたが、「有田にいるからには」と、磁器づくりに変えた。有志10人で陶芸家グループ「炎」を結成したり、仲間の窯を借りるなどして励んだ結果、昭和54年に日本伝統工芸展に初出品で初入選を果たした。 染付を選んだ理由は「窯業試験場では絵付けの技術に関する仕事が多かったことから、絵で見せる作品、それも作家がそんなに多くない染付にした」という。 布染めのヒントは、江口勝美さんの和紙染めから得た。単なる人まねで終わらないよう、白を生かし、規則的な模様を心掛けるなど、独自性の追求に余念がない。13代今泉今右衛門さんから、染付一筋で技術を伸ばした方がいいと心強いアドバイスを受けたこともある。 昨年、念願の窯を作業場に設置した。窯の正式名称は未定で、個性的な名前を思案中。「今まで肩身が狭かったが、やっと最後まで自分で作ることができるようになった」と、顔をほころばす。焼き上がりの呉須の具合をいろいろ試しやすくなり、創作意欲はさらに高まっている。 |
■坂本義弘工房 西松浦郡西有田町曲川乙 JR有田駅から車で7分。 電話0955(46)4764 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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