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「天才肌の人間ではないし、自分の力以上のものができるはずもない。新しい自分、新しい作品を生み出したとしても、それは若いころからの積み重ねでしかない」。色鍋島様式の伝承と新展開を求め続ける人間国宝・今泉今右衛門さんの信念だ。ふだんは柔和な顔も、素地に筆を走らせる時ばかりは鋭い眼光へと変わる。 江戸時代の色絵の調合の技術が、そのまま一子相伝の秘法として残される名窯に生まれ、色鍋島の伝承という宿命を背負う。13代を襲名して家業を継いだのは1975(昭和50)年、49歳の時。父祖以来の色鍋島様式に独自の表現を試みる闘いの始まりでもあった。 「鍋島の中にある現代性をいかに引き出すか」。苦しみの末、たどり着いたのは、初期伊万里にある「吹墨染付」の技法だった。青い呉須顔料が磁肌全体に淡く広がり、白地の上に色絵文様を描いていた従来の色鍋島とは明らかに異なった。さらに「紬の肌合いの色鍋島ができないか」と、薄い墨色の吹墨風技法「薄墨」を開発。色鍋島独特の品性を備えつつ、見事に従来の殻を打ち破って見せた。 若いころから「ざっくり」という言葉を好んで使う。東京美術学校(現東京芸大美術学部)の学生時代は抽象絵画的なデザインに思いを巡らし、現在も、土のにおいの残るウブな初期伊万里をこよなく愛する。普段着も茶系の服が中心。どれも「ラフなものへのあこがれ」がそうさせた。 ただ、白地の肌に染付と赤、黄、緑の色絵が寸分の狂いもなく施される色鍋島とは全く相反する世界。「常に『ざっくり』とした温かみのある美意識を求め続けていた。吹墨、薄墨の作品づくりの原点はここにあると思っている」と振り返る。 一方で、一つのことに凝り固まる姿勢を嫌う。「こだわりからは、新しい発想は生まれない。作品に自分らしさ、新しさを求めるならば、常に自分自身を開放しておくべき」。一つの作品を作り終えた時点で、すでに「過去の仕事」と割り切る。厳しい陶芸の道に身を置き、絶えず一段上の仕事を追求する姿はいまも変わらない。 82年から一昨年まで県陶芸協会会長として陶芸界をリードしてきた。現在は有田窯業大学校長を務め、陶芸を志す若者たちに「基礎を身に付けなさい。何事も訓練」と指導する。「技術と美意識、それに人間性がからめば、その人らしい作品ができる」。自分自身に問い掛ける言葉でもあるという。 昨年秋には、これまでの仕事の集大成ともいうべき初の作品集を刊行した。古希を過ぎ、すでに円熟の境地ともいわれるが、「いまだに若い時に抱いた抽象的デザインを試みたいという夢がある。この年でしかできない新しい美への挑戦かな」。今右衛門芸術に妥協はない。 |
■今右衛門窯 西松浦郡有田町赤絵町。 JR有田駅から車で3分、赤絵町バス停から徒歩1分。 駐車場約10台。展示場あり。 電話0955(42)3101 |
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■関連リンク 筒井ガンコ堂のガンコスタイル・13代今泉今右衛門さんを悼む ■関連リンク 筒井ガンコ堂のガンコスタイル・今右衛門の創造世界 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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