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佐賀県の陶芸作家
 
作家写真 納所正一
(嬉野町)
昭和32年嬉野町生まれ。高校卒業と同時に県窯業試験場に入り、井上萬二氏からろくろ技術を教わる。54年、嬉野町の琥山窯に入社。小野珀子さん、小野祥瓷氏に師事する。白磁の魅力に取り付かれ、現在まで白磁中心の作陶生活を続ける。平成11年4月に念願の独立を果たした。西部工芸展、九州山口陶芸展、西日本陶芸美術展、日本伝統工芸展、日本陶芸展など入選多数。平成7年には、大英博物館から白磁鎬紋壺(はくじしのぎもんつぼ)を買い上げられる。昭和63年に日本工芸会正会員。
「白磁を見てどう感じられますか」−。人懐っこい笑顔を満面に浮かべながら、そんな質問を投げ掛けられた。予期せぬことに戸惑いを覚えながら、「凛(りん)とした潔さがあり、きれいですね」とだけ答えた。実際に作品からはそんな印象を受けたのだ。
 「白磁は単純だとか冷たいとかよく言われるんです。でもそれは白磁の魅力の一面でしかないと思うのです。白磁にもさまざまな表情があり、それを具現化できればと思って取り組んでいるんですよ」

納所正一さんは嬉野町吉田の素地納入業者の家に生まれた。親に連れられ窯元を訪れた際に見たろくろに魅了され、陶芸家の道を志した。高校卒業と同時に県窯業試験場に進み、井上萬二氏からろくろ技術を学んだ。その後、琥山窯(嬉野町)に入り、小野珀子さん、小野祥瓷氏の下で修行を積んだ。

「珀子先生にはいろんな作品展に連れていっていただき、さまざまな作品を通して自分の見聞を広めてきた。祥瓷先生からは形に対するさまざまな指導を受けた。個性を尊重してもらい、自分の作品に対して何の制約も受けずやってこれたことは大きかった」

自分たちに技術を教えながら作家の個性を引き出すという、窯全体の雰囲気が自分の性に合っていた、と振り返る。作家たるもの品のあるものを心掛けるべしという、もの作りに対する姿勢も、ここで培ったという。

テーマとして一貫して取り組んでいるのが「流れ」。白磁の表面を彫刻刀で大胆に削り、光の加減で微妙な陰影を浮かび上がらせる線彫り。一見しただけでだれの作品か容易に判別できる独自の世界を展開している。

「実はろくろの技術不足を補うために編み出した窮余の策。それがやってみたら案外面白かったので、今でも続けています。水、風、雲の切れ間から差し込む太陽の光など見る人によってイメージするものはさまざま。自分が思ってもみなかったイメージを教えていただくことは、作家みょうりに尽きます」

昨年、念願かなって独立した。自分の窯が持て自分の力量を存分に発揮できる舞台が整った。

「志したきっかけがろくろだったもので、やっぱりろくろが一番面白いですね。土の塊をひき上げる瞬間、そして完成までの過程。自分の手で作品を生み出しているという感覚は何物にも替え難いですね」

自分の満足だけでなく相手にも満足してもらう作品が目標だが「その域にはまだまだ遠い」と照れたように笑う。確かに評価というものが世の中に存在する限りその重圧からは逃れられない。しかし、その重圧すらも自然の流れとして受け止め、一生白磁に取り組んでいくのだろう。

気負いのなさがこの人の強みなのだと感じた。

出展作品
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白磁花入

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白磁壷

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■納所正一窯
藤津郡嬉野町三坂
長崎自動車道嬉野インターチェンジから車で約15分、祐徳バス式浪バス停から徒歩約10分、JRバス、西肥バス三坂バス停から徒歩約5分。
駐車場約20台。展示場あり。
電話0954(43)3430
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。
※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。
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