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暮らしに彩りをそえる器の数々。花器、つぼ、鉢、皿、湯飲み、コーヒーカップなど、勝田さんの作品のほとんどが茶系のシックな色合いを持っており、落ち着いた味わいがある。 「和紙染草花文」にこだわり、個性的な作品を次々に送り出している勝田さん。ドクダミ、ツユクサ、ツバキなど定番デザインのほか、最近ではレンゲソウなどの新しい題材も加わって幅が出てきた感じだ。 「毎年の伝統工芸展がやはり活動の主体となりますから、大作で試みた新しいモチーフが次第に増えるわけです」。身近な植物をスケッチしては大作で意匠を磨き、小さな日用の器にも技を生かしている。 技法的にはろくろ成形後、化粧土をかける生掛(なまがけ)に特色がある。伝統唐津の技法そのもので、いわゆる白化粧した器の表面が絵を引き立てる。 鳥栖市生まれ。陶芸とは無縁の家庭で育ち、父親の転勤で中学から名古屋で過ごした。瀬戸の焼き物産地に近かったこともあって自然に陶芸を志すようになる。 愛知県立窯業専修校で基礎を修得した後、徳島の田村功氏(大谷窯)の下で修業。佐賀に帰ってからは江口勝美氏(小山路窯)のもとで和紙染めの技法や鉄絵の手ほどきを受けた。 昭和55年、日の隈山西側の日の尺池のほとりで開窯。工房の窓から豊かな緑と水が望まれるという理想的な環境を手にした。 しかし恵まれていたのは景観だけではない。工房近くで偶然、良質の化粧土や鉄分を含む地層を発見した。地中の鉄分がコロイド状に固まった層で、線を描くのに最適の鉄釉(ゆう)がとれるという。 「不思議ですね。この土地に来て、草花の描くべきモチーフを数多く与えられ、さらに灰や土や鉄の材料まで与えられましたからね」 平成8年から9年にかけて人間国宝・今泉今右衛門氏に絵付け指導を受けたことが最近の大きな収穫という。「器の形に合わせたデザインがあるのを知りました。大変勉強になりました」。常に学び続けようとする姿勢は謙虚だ。 奥さんの充子さん(42)は佐賀市生まれ。間に長女恵里沙さん(高2)と長男慎(まこと)君(小4)がいる。家族をことのほか大切にする勝田さん。「子どもたちも粘土いじりが好きですね」と、日ごろから子どもとの触れ合いを欠かさない。 来年は開窯20周年。ちょうど節目の年の大英博出品となる。つぼと花器の2点。すでに形は決めており、これから文様をじっくり考える。 足元の小さな草にも、人知を超えた偉大なものの意思を感じるという。もの静かだが内に秘めた信念を感じさせる人柄。自然の神秘を観照する豊かな感性が、どの作品にも息づいている。 |
■日の隈窯 神埼郡神埼町尾崎 車でJR神埼駅から10分、東脊振インターから15分。 駐車場は12台収容。展示場あり。 電話0952(53)3018 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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