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「窯からは四季折々の風景を楽しめることができます」と武雄市東川登町に大門窯を構える大宅利秋さん。落ち着いた雰囲気が漂う窯からは水田と小高い山々を見渡せる。アトリエを兼ねた展示スペースには花器や茶わんなどの作品が淡く、穏やかな色彩を放つ。その出来栄えは柔和な人柄をほうふつとさせる。 有田工高窯業科を卒業。昭和44年、香蘭社勤務を経て母校の教壇に立って以来、作陶家として、また教諭として二足のわらじを履き続ける。51年から工房を構え、地方展でも順調に入選を重ねてきた。 日展に入選できないもどかしさを感じた58年ごろ、清六窯の中村清見氏(全国伝統工芸士会会長)に師事。技術面で具体的なことは教わらなかったが、師が常々、口にした「ものづくりは人づくり」の言葉に創作への姿勢を教えられたと述懐する。 約10年前から取り組んでいる「波」シリーズは大作の壺(つぼ)だ。内側からたたき出したり、土を付けて、表面にアクセントを付ける。うねった模様はまさに波であり、海中に揺らめく水の流れでもあるようだ。 その波シリーズの新作、「早春の波」は今年のながさき陶磁展で波佐見焼400年祭特別賞を受賞した。底の部分に行くほど青は鮮やかにグラデーションを見せ、海へのあこがれを表出した。今は12、3種の釉薬(ゆうやく)を主に使うそうだが、以前は600種類以上の釉薬をテストしたそうだ。 「なかなか納得のいく作品ができません」。そんな大宅さんが新たな表現を求め、「変壺(へんこ)」という作品を生み出した。その名の通り、独特のフォームをした壺だ。個性を持つ三つの部分(口、中央、土台)を別々に形成し、焼成するときに組み合わせる。幅広い表現を常に追い求める意欲的な作品だ。 また、有田町の九州陶磁文化館の陶芸教室でも講師も務め、一般の人に焼き物の楽しさを教える。「皆さんの一生懸命な姿が私のやる気と初心を思い起こさせます」。 大英博物館展を控え、「緊張しますね」と胸の内を明かす。海外への出品は初めてだが、日本人、外国人を問わず作品の持つ普遍的な美を感じてもらいたいと願う。「青い目をした人は青をより美しく感じると聞いたことがあるので、青い釉薬でいこうかな」と気負いは感じられない。これまで世に送り出した教え子はざっと千人を超える。県展や美協展で教え子たちの活躍に目を細めるとともに、自分もうかうかしていられないという気分で作品づくりに励む。 「技術的にはまだまだ未熟です」と謙そんしながらも「心身ともに健やかに焼き物と向き合いたい」と決意を語る。生み出す作品は大宅さんの言葉を代弁する分身のようなものかもしれない。 |
■大門窯 武雄市東川登町袴野岩崎 展示、即売も同所で。 国道34号の日ノ出城交差点から西へ約500m。 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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