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これほど系統立った古唐津の展覧会を見たことはなかったので大いに勉強になった。8月3日から26日まで佐賀県立九州陶磁文化館で開催された「古唐津と太郎右衛門窯展」である。「御茶わん窯開窯二百七十年記念」と銘打ったこの展覧会は中里逢庵氏(十三代中里太郎右衛門)の監修で、松浦系、武雄系、平戸系、多久系と広範囲で作られた古唐津のうち、中里家に収斂(しゅうれん)する松浦古唐津の数々を展示していた。
重要文化財で、種々の図録でおなじみの「絵唐津松文輪花大皿」や、同じく重文で入場券にも印刷された「絵唐津芦文壷」の素晴らしさはもちろんだが、ほかにも、ケースを破って持ち帰りたくなった素敵な品もあり、存分に目を楽しませてもらった。
驚いたのは、想像以上に早い時期から茶碗をはじめとする茶器が作られていたことだった。今でこそ四百年を経て、歴とした古唐津として私たちの目の前にあるが、遡れば、言うまでもなく、当時は新作の唐津である。そんな茶器に逸早く目をとめ、美を見出し、愛用した茶人たちの審美眼を、あれこれと忖度(そんたく)するのは愉しい。
献上唐津をこれだけの数見たのは初めてだった。さすがに規矩(きく)正しく、丁寧に作られているが、やわらかな味を残し、堅苦しさを免れているのが好ましかった。
私が知らなかっただけかもしれないが、従来、漠然と抱いていた古唐津のイメージを覆すに足る作品が多くあった。染付まであった。そんな古唐津の多様性を早くから知悉(ちしつ)していたのが、自ら古唐津の熱心な研究者であった故無庵氏(十二代中里太郎右衛門)と言ってよいだろう。実作者として晩年まで、実に多彩な作品を作り続けられたのである。
その意味で言えば、個人的にはあまり好みではなかった逢庵氏の近作、派手な文様、鮮やかな色の魚文壷の作品なども案外、唐津焼の伝統に沿っているのかもしれないと思い始めたのだった。
■関連リンク 展覧会レポート・古唐津と太郎右衛門窯展
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