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佐賀新聞創刊120周年記念・御茶わん窯開窯270年記念
古唐津と太郎右衛門窯展

<会期:平成16年16年8月3日〜8月26日>
平成16年8月7日

 連日30度を越す暑い日が続きます。そんな暑い日の一日、九州陶磁文化館で開催中の「古唐津と太郎右衛門窯展」へ出かけてきました。佐賀は唐津焼の地元でありながら、古唐津の作品を一堂に見る機会が少なく、地元の陶芸ファンからも期待されている展覧会です。展覧会の副題に「御茶わん窯開窯270年記念」とありますが、唐津では5代中里喜平次が、1734年(享保19)に唐津藩の命により、坊主町と呼ばれるところから現在の唐人町というところに藩窯を移し、「御茶わん窯」と呼ばれる御用窯を築きました。今年はこの窯を移した1734年から270年目にあたるのだそうです。この展覧会では、重要文化財2点を含む古唐津の作品、また中里太郎右衛門窯歴代の作品など約140点が紹介されています。私が訪れた8月7日は中里逢庵(13代中里太郎右衛門)さんによる展示解説会も催され、多くの唐津焼ファンで会場は熱気に包まれていました。

 会場へ入るとまず目を引くのは重要文化財に指定されている「絵唐津芦文壺(17世紀・日本民藝館蔵)」です。その姿から「そろばん玉型」といわれる器形の壺ですが、もともとは台所で貯蔵用などとして使う雑器だったのだそう。「絵唐津芦文壺」は正面には草花文が、裏には唐草文が鉄絵で描かれています。草花文のほうから見るとゆったり広がりのあるおおらかで豪快な雰囲気です。唐草文のほうから見ると、少し落ち着いた感じをうけます。同じ器なのに、見る角度によって違った表情を見せてくれます。こういった文様の施し方は、「市ノ瀬高麗神窯」と呼ばれる窯特有のものだそうで、徳利や鉢などにも同じような例が見うけられるとのこと。この窯オリジナルの文様だったのか、それとも特定のところからの注文だったのでしょうか。

 古唐津というと茶人に「一楽、二萩、三唐津」といわれる程、お茶道具として珍重されてきた焼物ですが、展示作品の茶碗のひとつにおもしろい作品がりました。「三島唐津型紙刷毛目平茶碗 銘『大海』」という茶碗です。平茶碗とありますが、ほとんど皿に近い浅めのつくりの茶碗です。「型紙刷毛目」とは、器面に型紙をのせ、その上から白土を刷毛で塗り、型紙をはがすと型紙を抜いた部分の文様が器面にあらわれるといった技法。この茶碗の見込みにもこういった「型紙刷毛目」による文様が施されていますが、よく見ると文様として施されている漢字が逆になっています。
「おそらく陶工が型紙を裏表間違えて刷毛目を施したため、漢字が逆さまになったのでしょう。」と逢庵さん。解説を聞いていたみなさんからも思わず笑い声が。

 もうひとつお茶道具にはかかせない水指をご紹介しましょう。展示作品にも様々な技法の水指が出展されていましたが、その中でいくつかの作品の中に何やらアルファベットのような文字が彫られているものがありました。「叩き黒唐津彫文耳付水指」もそういった作品のひとつです。
 粘土を紐状にしたものを輪積みし、内側に当て具をして、外側から叩き締める成形法「叩き」によりつくられていますが、器の底と、蓋の裏側にアルファベットの「L」字のような陰刻があります。

 逢庵さんによると伊万里の甕屋の谷、市松若屋敷、焼山諸窯でつくられた水指に「L」の陰刻や陽刻があるそうです。また茶碗の高台際にも同じく「L」が見うけられるそうですが、現在この文字の意味や由来は解明されていないそうです。




 藩窯「御茶わん窯」でつくられた「献上唐津」もご紹介しましょう。献上唐津の作品は水簸(すいひ)された白土を用いてつくられたそうで、精緻な印象の器が多く並んでいました。
写真の「献上唐津黒呉須雲竜文大皿」は大胆な絵画調の絵付けが印象的です。「御茶わん窯」では、有田のように絵付け職人ではなく、唐津藩の絵師が絵付けを施していたのだそうです。この雲竜文も、水墨画のようなタッチで描かれ、竜を囲む雲は幅広い刷毛で一気に描かれた様子がよくわかります。この他にも中里太郎右衛門窯歴代の作品も展示され、16世紀から現代の唐津焼を幅広く鑑賞することができました。

 先ごろ唐津焼とアジア諸国の陶器との関係を調査した「唐津焼の研究」にて、京都造形芸術大学の博士号を受けた中里逢庵さん。その研究をもとに逢庵さんが選定した作品が一堂に並び、またこの日は、ご本人による展示解説も開催され、会場は終始たくさんの陶芸ファンで賑わっていました。この展覧会は全国巡回(下記参照)の予定です。お近くで開催される際には、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。




■お知らせ
この展覧会は下記日程・場所へ巡回予定です。

・東京会場「日本橋高島屋」
平成16年9月1日〜9月6日

・大阪会場「近鉄百貨店・近鉄アート館」
平成16年10月9日〜10月13日

・京都会場「京都高島屋」
平成16年10月20日〜10月25日


●佐賀県立九州陶磁文化館

【所在地】西松浦郡有田町中部乙3100-1
【電 話】0955-43-3681
【駐車場】有
【休館日】月曜日・12月28日〜1月1日

■関連リンク 筒井ガンコ堂のガンコスタイル・イメージを覆した「古唐津と太郎右衛門窯展