トップ >> 筒井ガンコ堂のガンコスタイル >> vol.10 古陶磁の来歴の謎(2001年)
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 先夜、たまたま見ていたテレビの「開運なんでも鑑定団」で佐賀出身の人が鑑定を依頼した「鍋島」の染付の尺皿に一千万円の値がつき、会場が騒然となった。
 中島誠之助氏が「一番いい時代の鍋島の、しかも珍しい染付の尺皿です。新発見です。色鍋島に同じ図柄のものがあります。惜しいことに高台の内側に罅(ひび)が入っています。それが無ければ千五百万円はします」というような話をしていた。中島氏が言うのだから間違いないのだろう。
 何でも、その依頼人の叔父という人が骨董関係の人で、四十年ほど前、佐賀県内のある家に何回も通ってようやく買い取った品で、随分と安い値で入手したという。当時はまだ、専門家の間を除き、鍋島の評価が定まっていなかったことが分かる。その後、他の品は手放したが、その品だけには執着し、結局、姉にあたる依頼人の母親の手許に残されたというのである。
 テレビの画面で見る限り、器形は堂々として端正であり、絵もしっかりしているし、線もきれいで、藍(あい)の発色もよい。高台の櫛目(くしめ)が実に見事だった。
 私は一緒にテレビを見ていた娘に、戯れに「千五百万円かな」と言って、「まさかぁ」と呆れられたが、当たらずとも遠からずだったわけで、こちらもびっくりしたのである。こういうことが間々あるのが骨董の世界なのである。
 それにしてもあの尺皿にはどのような来歴があるのだろうか。以前にも書いたが、鍋島は朝廷や将軍家あるいは諸大名への献上品・贈答品か、藩主の日用品に限られていたのだから、一般に出回ることはまずなかったはずである。それらの中の一つが時を経て、何らかの理由で「野」で見つかる。さてどのような物語が秘められているのか。
 そして、はたしてあの皿に続く第二、第三の掘り出し物が県内にあるのかどうか。下世話な興味が湧いてくる。

■関連リンク 筒井ガンコ堂のガンコスタイル・「鍋島」の気品

photo 染付土筆文皿(鍋島)(そめつけつくしもんさら)
1700〜1780年代
C有田陶磁美術館所蔵
photo 染付灘越蝶文皿(そめつけなだごしちょうもんさら)
1700〜1780年代
C有田陶磁美術館所蔵
photo 染付菊唐花文皿(そめつけきくからはなもんさら)
1690〜1730年代
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵品
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photo ■筒井ガンコ堂
本名:筒井泰彦(つつい・やすひこ)
1944年佐賀県生まれ
平凡社にて雑誌「太陽」編集に従事。
佐賀新聞社で文化部長、論説委員など歴任。
元「FUKUOKA STYLE」編集長。
著書に「梅安料理ごよみ」(共著)、
「必冊 池波正太郎」等
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