この絵は1700年後半から1800年代にかけて人気を博した長崎版画の老舗「大和屋」の作品です。長崎版画は異国情緒溢れる題材を版画にしたもので、長崎のお土産品として大人気でした。この絵は唐館、つまり中国の商館の様子を描いたものです。よく見ると絵の中にはたくさんのやきものが描かれています。なにやら相談をしている二人の後ろの戸棚に注目してみましょう。上の段中央には急須や湯のみなどの煎茶器が収納されています。手前の小さな急須は染付のようです。大きな急須は朱泥のようですが中国・宜興窯(ぎこうよう)の物ではないでしょうか。宜興窯では茶壷の名器がつくられており、朱泥を中心とした器で人気がありました。戸棚の一番下段には煎茶に使用する素焼き製の風炉(ふろ)があります。その隣にはほんの少ししか見えませんが、染付の風炉または火鉢のようなものがあります。 |