この絵は江戸一番の贅沢な鮨として有名だった「松の鮨」を描いたもので、おねだりをしている子供がかわいらしい絵です。松の鮨は図に描かれているような中皿に詰められて、進物用として流行っていました。女性が手に持っている皿は五寸ほどの染付の皿で、エビがのっていると思われる鮨が盛り付けてあります。奥に見える戸棚の中には、同じく染付の蓋物や花文の輪花鉢が置いてあるようです。
もともと鮨は保存のために自然発酵させた食べ物でしたが、江戸中期頃から飯に酢を加えて味をつけた鮨が、江戸後期頃にはにぎり鮨がつくられるようになります。「江戸前」のにぎり鮨は、アナゴやエビなどを煮付け、握った飯にのせて食べたのが始まりです。生魚をのせるようになったのは幕末頃からだそうです。 |