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Vol.22 |
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天空の橋
(てんくうのはし)
■発行所
徳間文庫
■著者
澤田ふじ子
■定価
552円
■ジャンル
歴史小説 |
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京焼のブランドとして覇権争いを繰り広げる「粟田焼」と「五条坂・清水焼」。江戸・文政年間の京都を舞台に、優れた京焼を作ろうと励む人間たちの姿をいきいきと描いた作品です。
「粟田焼」随一の陶工であった喜助が、積問屋の高野屋長佐衛門の手によって、「五条坂・清水焼」の窯元へと引き抜かれたことを発端にして、物語は彼を巡る抗争・確執のエピソードへと展開していきます。
喜助の技術力が産地を支えていたという事実を甘く見た「粟田焼」は、彼がいなくなったことで、しだいに衰退するはめになり、彼の技術力を高く評価し、新たな息吹を与える価値として彼を迎え入れた「五条坂・清水焼」はその後、隆盛に向かいます。
このことは、技術が人と共に移動し、優れた職人が常にその業界の繁栄と衰亡の鍵を握っていることを私たちに教えてくれます。
この物語の面白いところは、二つの産地間抗争が、そっくりそのまま現代の企業における技術競争に通じるところであり、「技術とは人の価値そのものである」という本質を見事に見抜いている点です。
作者のあとがきには次のような言葉があります。
「私は歴史(時代)小説を書いているが、古い歴史の事象を、あれこれいじっているつもりはいささかもない。人間はいつの時代でも、取りまく社会の状況が変っただけで、本質においてはさして変化していない存在。こうした人間に、時代物の衣装をまとわせ、私はいまの人間や社会を描いているつもりなのである。」
■関連リンク 「蛍の橋」(澤田ふじ子)
■関連リンク 「修羅の器」(澤田ふじ子)
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