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Vol.20 |
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日本の名随筆 5「陶」
(とう)
■発行所
作品社
■著者
白州正子 編
■定価
1200円
■ジャンル
随筆集 |
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本書は陶芸家、小説家、随筆家、評論家など、日本を代表する作家たち総勢31人による「陶」に関する名随筆を収めたアンソロジーです。主な作家を紹介すると、陶芸家より柳宗悦、富本憲吉、加藤唐九郎、小説家が武田泰淳、安岡章太郎、幸田露伴、評論家では中村光夫、小林秀雄といった名前が並びます。
そのような蒼々たるメンバーの中で、特に異彩を放っている文章が、芸術家の岡本太郎氏による「縄文土器」という評論です。
氏は「縄文土器」のあの奇怪な形状、文様に不可思議な美観を感じ、そのすさまじさに圧倒されます。一体全体これはほんとうに私たちの祖先が作ったものだろうか。これはふつう考えられている、なごやかで繊細な日本の伝統とはまったくちがうじゃないか。そこに氏は弥生時代との歴然とした美意識の断絶を見てとります。
縄文式文化の形態、その根底にある世界観の考察もさることながら、氏の評論は単なる美術史的な考察だけにとどまりません。果たしてそこから何を引き出し、どう関係することができるかという問題を、日本の芸術世界に突きつけています。
岡本太郎氏の評論の他には、本コーナーでこれまで紹介してきた物語となじみの深い作家の文章が収録されています。「野菊の茶碗」の筆者である富本憲吉氏は「終りなき祝祭」のモデルとなった人物であり、「骨董余話」の秦秀雄氏は、あの「珍品堂主人」のモデルということで、本コーナー愛読者にはぜひとも読んでもらいたい一冊です。 |
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