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                  龍秘御天歌 
                  (りゅうひぎょてんか) 
                  ■発行所 
                  文芸春秋 
                  ■著者 
                  村田喜代子(むらたきよこ) 
                  ■定価 
                  1524円 
                  ■ジャンル 
                  歴史小説 | 
                
                
                  
                   
                   慶長の役で連行された朝鮮人陶工たちのゴッドマザー百婆が、夫の葬儀を朝鮮式でやると宣言すると、九州は北部の陶芸の里で村中が大騒ぎに−。(帯広告より) 
                   
                   
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                   肥前皿山・龍窯の窯主の葬儀にまつわる朝鮮渡来人と日本人の文化・慣習の対立を描いた作品です。 
                   
                   百婆という窯主の嫁が、亭主の葬儀は何が何でも朝鮮式で行うと言い出したことから騒動が始まるのですが、この百婆の言動が時にユーモラスに、時に恐ろしくさえあり、時に悲哀が胸に迫るようによく描かれています。筋立てもたいへんよくできていて、とくに後半に入ると、故人の亡き骸を日本式に火葬にするのか、朝鮮式に土葬にするのかといった対立から、勢いを増して物語は進んでいきます。 
                   
                   あとがきに『モノがあるということ』と『モノが消滅すること』はどういうことだろう、という村田喜代子氏の問いがあります。作者は渡来人と日本人の死生観の対立を通して、その問いに敢然と立ち向かおうとしたのではないかと思われます。また、慶長の役で連行されてきた朝鮮陶工人たちの様子が、日本人たちよりも逞しく生き生きと描かれています。 
                   
                   蜘蛛の巣顔の百婆は言います。 
                  「おれは朝鮮人や」 
                  「しかし、倅たちは日本人なのや」 
                  「双方共にあいだはねえのさ」 
                   
                   この言葉にアイデンティティーに対する百婆の考え方が出ていると思うのですが、みなさんはどう読まれますか? 
                   個性ある老婆を描くことに定評のある村田喜代子氏の、日韓双方で高い評価を受けた意欲作です。 
                   
                  ■関連リンク 「人が見たら蛙に化れ」(村田喜代子) 
                  ■関連リンク 「百年佳約」(村田喜代子) |