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教員生活28年。これまで多くの生徒と接してきた吉田さんから受ける印象は、ひたむきに焼き物と対面する職人の雰囲気とは異質だ。やはり、教師として見た方がしっくりくる。 福岡市出身。佐賀大学教育学部で美術工芸を専攻した。そこで焼き物の奥深い世界にひかれ、卒業後、松江市の民芸作家船木研児の元で陶器の修行を積んだ。「大学を出たばかりで陶器、磁器、特にこだわりはなかったんです」。2年後、教師として有田工業に呼ばれる。 赴任してすぐ、生徒の指導の傍らで制作に取り組んだ。初めは校内の作業場を借りていたが10年後、県陶芸協会入会の条件を満たすためにアトリエと窯を購入。「一人で集中する場所が欲しかったし、教える身からも自分の技術を磨きたかった」。 学校があるときは自分の制作は行わない。秋の日展、春の現代工芸展に標準を合わせた夏、冬休みだけに集中する。窯入れは春と夏に1回ずつ、大作は1年間で4つだけ。 夏はずっと、「サウナのような室内」にこもり、朝から晩まで黙々と制作に没頭する。武雄市の自宅から離れた、卸団地や県窯業技術センターなどが集まる静かな場所のアトリエには「家族もあまり訪れない」という。 教師を辞めて、焼き物作りに専念しようと思わなかったのだろうか。 「何度かありましたが、自分で経営までやるのは性に合わない。それに教え子の上達を見るたびに、『辞めるのは簡単』と思って辞められなくなる」。今は教え子たちに、岩永範彦さんら多くのライバルがいる。 吉田さんの磁器は一貫して「海」がモチーフ。和紙染め技法を用い、数種類の青と色の濃淡で、ぶつかり合う波や照り返しなどを表現する。 「高校まで(福岡市)和白の外海そばに住んでいた。見えない所に住んでみて、何となく海が懐かしくなるんです」。制作に行き詰まりを感じると、違うテーマに取り組もうかと迷ってしまう。そんな時、古里の海に似た唐津や西海橋へドライブし、創作のイメージをかき立てる。 ここ2、3年は有明海に足が向いている。「変化に富んだ有明海の、特に夕日が映える干潮時にひかれるんです」。数年後には外海ではなく、有明海をテーマにした作品に取り組む予定だ。 イメージをつくり上げてから成形する。染付は、青と白のバランスに注意する。「余白が生きるかどうか。それができないとただの絵、模様になり、焼き物が死んでしまう」。作品を絵画的に見立てる吉田さんのこだわりだろう。 教職も4年後に定年を迎える。生徒と向き合う時間を、そのまま物作りと向き合う時間に移すという。「食器など新しいことにも取り組みたい。作風を変えるかどうか、具体的なことはやめてから考えますよ」。その言葉からも、柔軟に、したたかに焼き物と向き合ってきた姿勢が感じられる。 |
■アトリエ 西松浦郡有田町赤坂工業団地 JR有田駅から車で5分。 展示場なし。駐車場7台収容。 電話(自宅)0955(23)5590 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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