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四百数十年の歴史を持ち、日用雑器を中心に製造してきたことで知られる吉田焼。土蔵造りを改造したような古い家屋が点在する静かな山あいの里、吉田皿屋地区の一角に、宮崎祐輔さんが主宰する「谷鳳窯」を見つけることができる。 同じ嬉野町内にある琥山窯で16歳のころから7年間、作陶を学んだ。琥山窯の方針は「作陶する本人の個性に合った作風・技法を身につけさせる」というもの。薬かけから始めた宮崎さんは、琥山窯を開いた故小野琥山さんの技を間近で見ることができた。これが「後々大変な財産になった」と言う。 琥山窯での修業の一方、身近な草花のスケッチやろくろ引きに明け暮れ、腕を磨いた。その後、宮崎さんは白磁、それも染付と上絵とを巧みに組み合わせた作風を確立させ、父谷男氏とともに自宅近くに谷鳳窯を開窯したのが昭和52年、23歳のときだ。染付、染錦(そめにしき)、赤絵、布目染付、釉裏紅(ゆうりこう)と宮崎さんの表現法は多岐にわたる。ただ、作品に共通して底流するのはシルクロードのイメージだ。 砂漠を思わせるくすんだ色を地色に用いた陶器に、呉須(ごす)で一気に描かれたラクダ、柔和な表情を浮かべる天女、シルクロードからもたらされたブドウやザクロなど、日本古来の花鳥風月とは趣を異にした作品からは、宮崎祐輔という作家の個性が浮かび上がる。「昭和56年、友人に誘われて中国の石窟(せっくつ)見学に出掛けた時に初めて、敦煌や周囲の人々の素朴な暮らしぶりを目の当たりにした。当時は何とも思わなかったが、帰国後、シルクロードを作品に表現したいという衝動が、ふつふつと自分の内側からわいてきた。その時の体験、感動が今の自分を形成したといっても過言じゃないですね」 最近は焼き物の新しい可能性を探ろうと、幾何学文と具象を組み合わせた作品に取り組んでいる。それも器の中に具象を、表面に幾何学文を対比させるというもの。作品に広がりを持たせるため、エアブラシを使った絵付けや絵をかき込み過ぎず、ぼかしを入れるなど試行錯誤の日々が続く。 理想形をどう表現するか自分の中でもまだまだ漠然として、今後どう進化させるかはっきり分からないが、わずかながら一筋の光明が見えた、と言う。そのために当面取り組まなければならないことは、対象物をデフォルメし、文様化することときっぱり。しかし、「もともと絵が好きなんで、どうしてもかき込み過ぎるんですよ。自分でもいけないとは思うけど」。 焼き物を含め創造の魅力は、一つの表現法を確立するまでのアプローチと宮崎さん。確立するまでの過程で数え切れないほどの失敗が待ち受けているのも事実だが、だからこそ面白いと笑う。 「確かに自分が求める道は遠く険しい。後で振り返れば、あそこで別のやり方を試していればもっと早く到達できたのに、などと悔やむかもしれない。でもそれでいいんです。その失敗と後悔の繰り返しがあるからこそ、飽きることなく陶芸という道に携わっていけるんです」 |
■谷鳳窯(たにほうがま) 藤津郡嬉野町吉田皿屋 長崎自動車道嬉野インターから車で15分。祐徳バス西吉田入口バス停から徒歩3分。 駐車場あり。 電話0954(43)9850 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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