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佐賀県の陶芸作家
 
作家写真 前田泰昭
(西有田町)
昭和12年生まれ。有田町の陶磁器メーカーでデザインなどを担当した後、36歳で独立。独特の辰砂の表現が持ち味で、日展を中心に活躍。日展特選2回、日本新工芸展文部大臣賞など多数受賞し、辰砂の第一人者として高く評価されている。日展会員、日本新工芸家連盟理事、県陶芸協会副会長などを務める。
日の光や澄み切った空気を、辰砂(しんしゃ)の赤い色で表現したい―。その思いからこの十数年来、早朝や夕方に車を走らせて通っている場所があるという。日の出や夕景をじっと見つめ、スケッチし、創作に結びつけている。
「絵画とは違う、焼き物の表現だから限界はあるが、逆に焼き物でしか出せない表現もある」。それが前田さんがこだわる辰砂の表現だ。

辰砂の第一人者。前田さんの辰砂は深い味わいを秘めた色だ。最近は染付の青との組み合わせで、山や海といった自然の姿を描いている。奥深い赤と青の表現。複雑で微妙な色合いが重なり合い、深遠とした情趣を醸し出す。

有田の陶磁器メーカーに入り、デザインなどを担当。本格的に陶芸の道を志したのは21歳のときだった。以来、日展を中心に公募展でも活躍、36歳で独立した。

当初取り組んだ染付に飽き足らず、「自分の表現を見つけたい」と選んだのが辰砂だった。辰砂は中国陶磁史でも大きな地位を占める歴史ある技法だが、「その時代の表現をしなければ」と現代の辰砂を追い続ける。

窯変天目など多様多彩な技法を駆使し、その技のきれのよさはさすがと思わせる。しかし、それらは主役ではなく、「辰砂に向かうための一連のもの」と位置づけは明確だ。

いかにいい色を出すかは窯の炎にかかっている。「満足いく作品ができないから繰り返し作る。自分では絶えず追究し、前進しているつもりでも、ふと気付くと元に戻っていることもあります」。やればやるほど難しいが、難しいだけにやりがいがある。

県陶芸協会副会長として、大英博物館展の準備にも奔走している。同館の下見では、その規模や内容の充実ぶりに驚いたという。

「恐らく海外の人は日本の陶磁器について固定観念があると思うが、佐賀の陶芸界は層が厚く、幅が広いから、きっと見方が変わると思います。日本の陶芸に関心を持ってもらういい機会になるでしょう」。近づく本番に期待を込めている。

平成元年には西有田町北川内の山中に、まき窯「泰昭窯」を設けた。まき窯の話をするとき、「面白いんですよ」と前田さんの表情は和む。その理由は「まき窯には、制御できない炎の力があるから」。

「マンネリ化しないためにこの窯を造ったんです。自分自身に刺激を与えないと、つい楽な方向に流れてしまう」と言い、年に一度か二度、まき窯に火を入れる。

工房を訪ねたのは、ちょうどそんな日だった。ラフな服装の前田さんは「動物は炎に刺激を受ける性質があるんじゃないでしょうか」と赤く燃える窯の炎を見つめて楽しそうに笑った。
出展作品
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残照

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彩炎

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■泰明窯
西松浦郡西有田町曲川乙
JR有田駅から車で7分、伊万里口バス停から徒歩3分。
駐車場約30台収容。展示場あり。
電話0955(46)3089
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。
※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。
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