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「唐津焼のスキというか、飾らない自然な造形に心が安らぐ。自分らしさを表現できそうな気がする」。新潟県に生まれながら唐津焼に魅せられ、東松浦郡鎮西町に窯を開いて20年。藤ノ木土平さんは唐津焼の魅力をそう語る。 自然から創造のエネルギーをもらっている、と話す藤ノ木さん。山中にある工房を訪ねたのは4月の初め。自宅と作業場周辺には、20本近い桜が薄いピンクの花をつけていた。新緑の木々に囲まれた庭にはキジやタヌキも姿を見せるという。そんな自然の中に、チョウのような、あるいは戦闘機を思わせる羽根をつけた壺(つぼ)、流線型でロケットのように直立する花瓶が並んでいた。 「人類が月に到達して30年。壺や花瓶も空を飛び、宇宙から地球を眺めてもいいじゃないか。そんな気持ちが羽根になって表れた」。ここ2年ほど藤ノ木さんが力を注ぐ”飛翔シリーズ”はこうして始まった。 新潟県内の高校を卒業するまで焼き物とは無縁の生活を送った。高校卒業直後に上京。洋画家を目指し、専門学校や絵画研究所で油絵を学び、博物館や美術館巡りをするうち、陶芸に興味を持った。 転機が訪れたのは25歳のころ。洋画の創作でスランプを感じた藤ノ木さんは、気分転換のため九州スケッチ旅行に出かけた。予定も目標もない気ままな旅。3月初めに鹿児島県種子島をスタート。風景を描いたり、さまざまな窯元を泊まり歩きながら北上した。「突然訪ねても、どこの窯場も飯を食わせてくれた」。4月に、東松浦郡北波多村の大橋裕さんの大杉皿屋窯にたどり着いた。 大橋さんの元で唐津焼の世界に引き込まれた。軽い気持ちで訪ねたのだが3年間滞在し、唐津焼の基礎から学ぶ。その後、唐津焼と関係が深いとされる岐阜県の織部焼の窯元でも教えを受けたが、結局は唐津焼に帰ってきた。 「織部焼は洗練されているが、唐津焼の持つ人間くささ、土くささが僕の気持ちにぴったりあった」。20年前に鎮西町に窯を開き、自然に囲まれた作業場で次々に作品を作り上げてきた。 藤ノ木さんが作品をつくる上で大切にしているのは、土の個性をいかに生かすかということ。同じような土でも茶わん向き、壺向きと性格の違いがあるという。その違いを見極めることが大切と話す。自宅には炉を切った茶室があり、時間を見つけては心静かに茶をたてる。 「いい茶わんはお茶を飲んだとき、活力がわくような形。50年間生きてきて見たこと聞いたことをぶつけ、土の顔を引き立てたい」 |
■土平窯 東松浦郡鎮西町野元 JR唐津駅から車で約30分。 駐車場、展示場あり。 電話0955(82)2970 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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