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「殿さん知事」として親しまれた故鍋島直紹さんは、肥前陶磁の収集家、研究家としても知られていた。樋渡さんを紹介する文章の中で、「氏独創の白磁花瓶・置物彫刻の技能は広く、なかでも大物制作には定評があり、日本三大稲荷の肥前鹿島祐徳稲荷楼門の等身大『随神像』の製作者としてその技術はとくに世間に認められる栄に浴しています」と高く評価している。 白磁のち密な彫刻を得意とする樋渡さんは、愛媛県伊予郡砥部町で生まれた。砥部町は松山市の南にある山あいの町で、1777(安永6)年に磁器を焼き始めている。四国では有数の焼き物産地であり、江戸時代から肥前陶磁との交流があったと伝えられている。 砥部工業学校に進み、有田工業学校の2代目校長を務めた故寺内信一さんと出会う。陶六の名前は、寺内さんが付けた。「六は縁起のいい数字と聞いた」という。卒業すると、地元の窯元でろくろ師として働いた。しかし青年団の柔道で足を痛め、ろくろをけることができなくなった。これが転機となり、彫刻の道に入った。観音像や当時輸出されていた花瓶などを手がけた。 「寺内先生は、寺内観音と称されるほど観音像で知られていた。工業学校に3、4点あり、よく写生した」と振り返る。寺内さんが帰郷すると、後を追って有田に来た。柿右衛門窯で20年にわたり彫刻の職人技を磨き、その後独立して窯を持った。 細部までち密な彫刻を施した像は、少ないもので30、多くなれば60もの部位から成っている。石こう型に鋳込み、丁寧に表面を仕上げる。龍を表現した置物は、波の一つひとつが細かく彫り込まれ、「まじめな仕事しかできない」という樋渡さんの職人芸を見る思いがする。 樋渡さんの作品群には、彫刻と並び青白磁がある。伝統的なユス灰の釉薬(ゆうやく)を使い、一服の清涼剤との感を抱かせる。1974年に日本伝統工芸展でNHK会長賞を受賞した「青白磁花瓶」は「端正な美しさのなかに、温かい心を感じさせる」と評された。 大英博物館展には、「白磁魚籃観世音」「青白磁壺牡丹唐草」の二点を出品する。ともに長い間、技を磨いてきたものだ。「こういうものが佐賀でできているということを見てもらいたい」と楽しみにしている。 樋渡さんはこの一年ほど、骨折などで入院生活を送っている。工房に入れないのが歯がゆそうに見える。「気持ちだけはいろいろ考えている」と次の作品の構想を練る意欲は衰えていない。 |
■陶六窯 杵島郡山内町立野川内 JR三間坂駅から車で5分。狩立橋バス停から徒歩5分。 電話0954(45)4701 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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