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「和紙染めと言っても一般的な和紙じゃなく、もっと吸水性の高い紙を使っている。染付の繊細さは紙質が大きくかかわっているんじゃないかな」。そう話す中尾英純さんの作品は、他の作家の和紙染めに比べると文様がずいぶんシャープな印象を受ける。 文様の一つひとつがくっきりしていて、遠目では輪郭に極細の線が描かれているようにも見える。最近は、余白を残した作品にも挑んでおり、染付の青と地肌の白とのコントラストが一層際立っている。 格子の絵柄は久留米絣(がすり)からヒントを得た。大小切りそろえた紙に呉須(ごす)を垂らし、文様の場所と濃淡を規則的にずらしながら幾何学模様を形作る。何度も重ねて色を濃くしていく作業に、英純さんは「藍(あい)は藍より出て藍より青し」を実感するという。 格子の割り入れをはじめ、作品が完成するまでの労力は並大抵のものではない。大英博物館に出品する作品には、2千枚もの型紙づくりに丸一日、張り付けに4日と根気のいる作業を要した。 もともとは陶芸を目指すことはまったく考えていなかった。高校卒業後、福岡県内の商事会社に就職したものの、久留米市や伊万里市内の企業を一、二年ごとに転々とした。23歳の時、兄の恭純さん、龍純さんに「やりたい仕事が見つからないなら一緒に陶芸をやろう」と誘われ、窯業試験場入り。ろくろ、絵付け、釉(ゆう)薬など手広く学び、兄たちの工房に仲間入りした。 恭純さんは白磁、龍純さんは色絵呉須と自らのスタイルを築いている。英純さんも独自の道を模索することに。 「何をやるかということについては、たとえ兄弟でも助けてもらうことはなかった。兄たちは厳しかったが、和紙染めを選んでからは的確なアドバイスを受けるようになった」と振り返る。好きというより、生活のために始めた陶芸だったが、今では「有田焼の中でも染付の青はとても気に入っている」と目を輝かす。 大胆、そして繊細な作品づくりを目指す一方、自分の考えだけに凝り固まることのないよう、工房を訪れる人にはできる限り作業の様子をのぞいてもらう。「お客さんの反応は常に気にしている。どんなふうに作っているのかじっくり見てほしい」と言う。 大英博物館展でも、現地から受ける評価が一番の関心事だ。「花鳥みたいに欧州がイメージする絵柄とは違う有田焼の良さをアピールしたい」と英純さんは開幕を楽しみに待っている。 |
■中仙窯(なかせんがま) 西松浦郡有田町中部乙 JR有田駅から車で2分。徒歩10分。 展示場あり。駐車場約10台。 電話0955(42)2856 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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