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緑の釉薬(ゆうやく)のしっとりとした景色に、おおらかな造形が調和する。白武初芳さんは陶芸の道を志して以来、「緑釉」に取り組んでいる。 「野山の自然を思い浮かべながらろくろを引き、形を整えていく。自然を表現するための緑色は作品づくりに欠かせない」。ろくろ成形と釉薬掛けには細心の神経を使うという。成形でもシンメトリックではない曲面を用いたおおらかな造形に仕上げる。 夏休みに入った大和養護学校の窯業室。生徒たちの姿はないが、教諭の白武さんは土をこね、黙々とろくろを回す。棚に並んだ緑色の深鉢に手を伸ばし、「子どものころ遊び回ったふるさとが、頭をよぎる。伸びやかな自然の景色を出せたらいいんですが…」。少年のように目を輝かせる。 白武さんは、最初の赴任地だった金立養護学校(佐賀市)で陶芸を始めた。カリキュラムに組み込まれた作業学習としての窯業。先輩教諭の山本律夫さんと福島清海さんから誘いを受けたのがきっかけだった。高校時代、ラジオ作りや演劇に夢中になった白武さんは「無から形を作り出す作業には創造する喜びがある。陶芸の世界も同じで、思い描いたものが出来上がったときは最高にうれしい」と話す。 「緑釉」も山本さんに手ほどきを受け、その後は自分なりの緑釉の世界を追求。最近は、独自に白い釉薬と緑の釉薬との「重ね掛け」に取り組んでいる。 「大地の詩」(第30回日展入選作、1998年)は、微妙な曲面の構成と緑の釉薬で大自然の豊かさを表現した。「厚くしたり薄くかけたり、釉薬のかけ方でイメージが大きく変わってくる。計算通りにはいかないが、偶然に表れる窯変がとても面白い」と白武さん。ここ5年ほど、新工芸展での活躍が目覚ましい。95年から2年続けて日本新工芸賞を受賞した。96年の受賞作「夜明けの珊瑚礁(さんごしょう)」は、沖縄でのキャンプがヒントになった。 10年ほど前から夏になると、大学時代の親友と那覇の浜辺でキャンプを楽しむ。「夜釣りをしたあと目覚めると朝日が美しく輝いていた。透き通るような海とサンゴの美しさに目を奪われた」。淡い緑と青に彩られ、微妙に変わりゆく夜明けの情景を心象的に表現している。 暇を見つけては、よく展覧会に出かける。「日本画、洋画を鑑賞し、作品の景色を思い描くときの参考にしている」という。 長年の夢だった工房を今年6月、自宅横に築いた。「自分の場所ができると落ち着きますね。その分集中して自然をテーマに緑釉の世界を深めていきたい」。作陶への意欲を熱っぽく語る。 |
■白武初芳工房 佐賀市兵庫町瓦町 国道34号伊賀屋駅入口交差点から北へ約600m。JR伊賀屋駅から徒歩で約15分。 駐車場約3台分。 電話0952(29)5730 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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