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スタートは白磁からだったが、端正な造形美の「藍染(あいぞめ)」「紅染」でも定評がある。幻想的で鮮やかな色調が魅力だ。「有田の土を使うことは今までと変わらない。いろんな人の作品を見て衝撃を受け、若い時にはさまざまな挑戦をしたい」。穏やかな表情だが、庄村健さんの作陶への情熱と探求心はおう盛だ。 有田工業高を出て一年間、武雄の丸田正美さんの窯元で陶器を学んだ。磁器とは違う土ものだったが、この時の経験が作陶生活の土台になったという。その後、県窯業試験場に入り25歳まで、井上萬二さんに師事、ろくろの技をみっちり仕込まれた。 6年間の修業時代。生徒は5、6人いて庄村さんが一番若かったという。「入学したてのころ、湯飲みを土ものの要領で作ってしまった。井上先生がいなかったためだが、全部無残なまでに(先生に)壊されていた。40歳代と脂も乗り切っていた井上さんの実地指導は厳しかった。若かった分、一番よく教えてもらって感謝しています」 20歳で県展初入選、その後、各展覧会で入選を重ねた。昭和55年には、青白磁で日本伝統工芸展文部大臣表彰に輝いた。31歳の若さだった。しかし、白磁・青白磁だけで満足せず、独自の色を求め新たな挑戦を始める。技術的には、土ものに使う釉薬(ゆうやく)を磁器用に調合するのが難しかったという。試行錯誤ののち美しい窯変が生まれ、藍染という独自の世界を築いた。 「藍染を眺めていると柔らかさと温かみがじわじわ伝わってくる。15年間やってきたが、人の心を引きつける魅力をさらに出せるよう、今後も腕を磨いていきたい」と話す。 藍染に続いて「紅染」も手がけた。きっかけは元プロ野球広島カープの衣笠祥雄さんからの引退記念品「火の鳥の壷(つぼ)」の依頼。工夫を重ね、淡い赤色で温かみのある柔和な紅染がやっと出来上がった。藍染に続き、庄村さんならではの紅染の世界が切り開かれた。 庄村さんは、5代目「晩香」を名乗る。古い歴史を感じさせる店構え。落ち着いた風情の赤絵町の通りに面し、戸口の中央には色絵の大皿。初代晩香・庄村健吉さんがパリ万博に出品するため焼いたもので、その華やかさが目を引く。 裏の白川沿いに工房を構える。庄村さんは麦穂を絵付けしながら「一年だけだったが、最初に土ものを学んでいてよかった。創作する上で視野が広がり、挑戦の源になっている。有田の伝統を踏まえつつも、さらに精進して、新たな境地を築きたい」。天空を見つめる大きい瞳(ひとみ)は輝きを増した。 |
■晩香窯 西松浦郡有田町赤絵町1647 JR有田駅から車で5分、歩いて30分。 駐車場は2台。展示場あり。 電話0955(42)2035 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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