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呉須(ごす)を使い、白磁にコバルトブルーの世界を描き出す「染め付け」一筋。呉須の微妙な色の違いを巧みに生かし、季節ごとに姿を変える古里の杉林を表現する。「一度やり始めたら、とことんまで突き詰めたい。杉を見たら『斎藤克己だ』と言われるくらいに」。シンプルでいて、奥の深い「染め付け」と「古里の杉林」への挑戦は続く。 東京で6年間、染色の下絵デザインを経験した。跡継ぎとして古里へ戻り、持ち帰った『財産』は絵の才能。博物館にある焼き物を見て、「これなら自分にもできるはず」と焼き物作りを決意した。有田の窯元で働く傍ら、型枠を使う「鋳込み」の手法で本体を作り、呉須絵の具を買って染め付けを作り始めた。 作品はすぐに評価された。作り始めて間もない80年、九州山口陶磁展と県展で入選。翌81年には「杉」で日展初入選を果たした。以来、日展入選は6回。日本現代工芸美術展では17回の入選を数える。40歳をすぎて、有田工業高でろくろ技術を修得。それまでの鋳込みによる成形から、さらに表現のバリエーションが広がった。 杉をモチーフにしながらも、その作風はさまざま。大英博物館に出品する「偲冬(しとう)」は墨はじきの手法で、枝に乗った雪を表現。葉を描かず、鋭く、複雑に入り組んだ杉の枝だけをデザインすることもある。 時間を見つけては近くの山に分け入り、道なき道を歩き回ってイメージを膨らませる。遠くの山を見つめながら、「ここからはこう見えるけれど、林の中に入るとまったく別の世界が見えるんです」と話す。 「焼いてから『こうすれば良かった』と反省の連続。まだまだやらんといかんことばかり」と話す斎藤さん。作品を手に取り、杉の根本部分を指さしては「この部分をもっと自然にぼかしたいんですが…」。堤の水面に映った杉林に感動し、焼いた作品を見ては「目で見たときは、まるで杉林が迫ってくるようだった。その迫る感覚を何とか出してみたい」。意欲は尽きることがない。 作品は展覧会出品用ばかりで、販売用の食器類などは作らない。「売ることを考えたら、そのことばかりに気が行きそうで」と話す。日展の展覧会で斎藤さんの作品が気に入り、四国から訪ねて来た人に「どうぞ持って行ってください」と作品を譲ったことも。陶芸に打ち込む姿勢は純粋そのものだ。 子どものころ、コイを釣った杉林に囲まれた堤や、山菜採りに出かける山など、斎藤さんは自らが描く世界を「手っ取り早い場所」と笑う。ときに厳しく、ときに優しく、ときに幻想的な姿を見せる斎藤さんの杉林は、知らず知らずの間に見落としていた古里の奥深い自然を教えてくれる。 |
■斎藤克己工房 伊万里市南波多町府招上 国道202号の府招上バス停から徒歩2分。 駐車場あり。 電話0955(24)2416 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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