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作家になる前、叔父たちの経営する有田の陶磁器商社に勤務した経験を持っている。だが創作への思い断ちがたく、30歳を目前にして陶芸家への転身を果たした。 「焼き物を売るために山陰や北陸など各地を回っていましたが、出張よりろくろの方がよかったですね」。当時の心境をそんなふうに回想する川口さん。 父親は川口武彦・前有田町長。長男である川口さんは、父や叔父たちの関係するその商社に入ることを当然のこととして受け入れたという。しかし、20代の川口さんは「売る」仕事と「作る」仕事の間で大いに揺れ動き迷い抜いた。 どちらかといえば寡黙な職人タイプ。セールスの仕事より、モノ作りの世界に引かれたのは自然のなりゆきだったのかもしれない。陶芸技法の修得はほとんど独学だったというから、なかなか気骨のある人だ。 作品は堂々としたたたずまいを見せる天目と、すがすがしい表情をした青磁。昭和52年の初入選以来、主として日本伝統工芸展への出品を続けている。 全く異なる黒と青の作品世界。それを「天目も青磁も同じ鉄系の釉薬(ゆうやく)ですからね」と言い切るあたり、さすがに熟達の腕を感じさせ頼もしい。 ヤツデの文様がおおらかな線で描かれる天目大鉢がある。あでやかな黒を背景に大きな花が静かに咲いているような風情で、ブルーの斑点(はんてん)がデザインを引き締めている。 天目釉をベースに、かき落とした絵柄の輪郭を茶系の絵の具で塗り込める技法で、花や葉をコバルトを含む釉薬で渋く浮き出させている。 「作りながら考えることは作品の重みというか、どっしりした感じの焼き上がり。それから見ていて落ち着くような色のことですね」 福岡のデパートなど大消費地を見て歩く機会の多い川口さん。消費不振の厳しい情勢には危機感を抱いている。そんな中で、長男の武亮(たけりょう)さん(25)が跡を継ぐことを決めたのは最近の朗報だった。こんな時代だから当然不安もあるが、父として期待するものは大であろう。 天目と青磁のほか、実はもう一つ川口さんの重要な仕事がある。それは日用の器だ。白磁に絵付けをした有田焼の皿、小鉢、水滴、香炉などの小品で、やや黄色みを帯びた磁肌に特徴がある。 代々続く陶芸の家系ではない。作家としては初代ということになる。だからこそ、脈々と続く輝かしい伝統を無視できない。「有田に生まれ育ったからには、やはり有田らしい有田焼を作りたいものですね」。そう言って穏やかに笑った。 |
■かわたけ窯 西松浦郡有田町桑古場。JR有田駅から車で5分。 駐車場約10台分。展示場あり。 電話0955(42)4184 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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