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「青磁は『世界の至宝』と言われるから首を突っ込んだんですよ。ろくろからこの道に入っていたら、きっと白磁をやっていたでしょうが、幸か不幸か、釉薬(ゆうやく)の研究から始めたので…」と青磁に取り組み始めたころを振り返る。 「青磁は奥が深い」といわれる。東洋の代表的な陶磁器で、中国で古くから焼成されてきただけに、名品が数多く伝わる。玄人好みのする技法でもあり、鑑賞する側の目は厳しい。だが、作る側の梶原さんのこだわりはそれ以上だ。 大学を出て実家の「しん窯」に入り、県窯業試験場で、釉薬や呉須(ごす)、胎土を研究。井上萬二氏にろくろを学んだ。積み重ねたノウハウが作品に表れる。 平成元年に割り竹式登り窯を築いた。文字通り竹を割って斜面に伏せたような形状の窯。「ガス窯でやっていて、偽物を作っているような気がしてきた。昔ながらの本当の青磁の色はどんなものだったのか。その色を自分で出したい」との思いが募ったからだ。以来、展覧会などに出す作品は登り窯に入れている。 登り窯はガス窯などに比べ効率が悪い。梶原さんは「この窯はいいものと悪いものがはっきりする。差が激しい」と難しさを語る一方で、「ガス窯では釉面の貫入(かんにゅう)が一様に現れるが、登り窯だと思いがけない模様が生まれる。不思議な炎の力です。だから、大変だけど登り窯でやるのが楽しみになる」と目を輝かす。 この4月に九州産業大芸術学部教授に就任。週の半分は大学で、朝から夕方まで講義のハードスケジュール。自分の制作時間を確保することが難しくなり、登り窯に火を入れる回数も減った。 「難しい役を引き受けてしまったとおののいています。でも、これまで実践ばかりだったから、あらためて理論を勉強する機会。また、伝統工芸一本やりできたけれども、それも見直して視野を広げるにはいい。転換期かと思っています」 「有田のにおいのする青磁」を求め、「自分にしかできない青磁はないかと模索するのが生きがい」という。最近取り組んでいるのは米色青磁。稲穂のような黄金色と言えようか。「有田の白があるから、上品な黄色が出る。登り窯でしかこの淡い感じは出ない。やはり、自然の炎の力です。すべてを分析したがるんですが、これについてはあまり分析しないがいいかなと思っています」。 かつて、師である井上萬二さんに随行し、アメリカのニューメキシコやニューヨークで、ろくろ技術を披露した経験がある。「欧米では、日本の伝統の技術に対する反応はすごい。高度な技術へのあこがれのようなものがあると思います」。大英博物館で梶原さんの色と形がどう評価されるだろうか―。 |
■茂正工房 西松浦郡有田町黒牟田 JR有田駅から車で5分、黒牟田バス停から歩いて2分。 駐車場は約10台収容。展示場あり。 電話0955(42)3444 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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