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中国の山水画を思わせる奇岩がそびえ、秘窯の里・鍋島藩窯の雰囲気を今に残す伊万里市の大川内山。落ち着いたたたずまいの窯元が軒を連ねるこの大川内山の高台に、レンガの煙突が目立つ長春陶窯はある。 現在、9代目長春を名乗る嶐(たかし)さんは、300年以上の伝統を持つ鍋島青磁の技法を生かし、やわらかな色調を放つ、繊細で優美な鍋島青磁の世界をつくり上げている。 「生まれた時からずっと焼き物の世界で生きてきました」というように、父の7代目長春さんの作陶にかける姿を見て育った。 「何をつくるにしても、中途半端なものは許されなかった。それこそ窯作りから造形、窯炊きまで厳しかったですよ」。その姿が、一切の妥協を許さない現在の長春さんの姿勢につながる。 鍋島青磁の特徴は、大川内山に産出する天然の青磁鉱を砕いて作った釉薬(ゆうやく)を使うことにある。化学的に調合された釉薬ではなく、天然の青磁釉を使うことで、やわらかな光沢と潤いを生みだしている。 長春さんが本格的に鍋島青磁に取り組み始めたのは、今から30年以上も前。父親と「世界に誇れる鍋島青磁をつくろう」と、何万点という陶片を研究。「それこそ、コバルトの吸い込み方まで」研究を重ねたという。 深みがあり、なおかつ洗練された青磁。それは、青磁の釉薬を一回だけではなく、二回、三回と厚く重ねて焼き上げることから生まれる。 研究と経験。あくまでも澄みきった青磁の色合いを追求しながら、新たな挑戦も始めている。「自分も年を取った分、青磁についてもいろいろなことを考える。年を取っていろんなことに挑戦できるという感じ。それも勉強ですね」と笑う。青磁の世界に「ろうの拭(ふ)き取り」技法など染色や漆器工芸の技法を取り入れ、「青磁に変化をつけていきたい」とも。 一口に「変化」といっても、青磁に上絵をつけると割れてしまう可能性もあり、非常に難しい面もある。それでも「青磁に花を咲かせてもいいじゃないか」。大英博物館展に向けても、「こんな機会に新たな挑戦ができて幸い」と目を輝かせる。 長い伝統を持つ鍋島青磁。芸術品とも呼べる作品を作り続けるが、「われわれ作る方は何10点、何百点と作るが、実際に買って使う人は、それ一品。一生大切に使っていかれるのだから、一点一点にこだわりを持ち続けたい」。鋭いまなざしの中には、鍋島青磁の芸術家として、そして伝統を受け継ぐ職人としての信念がある。 |
■長春青磁陶窯 伊万里市大川町大川内山 JR伊万里駅から車で約10分、大川内山バス停から徒歩5、6分。 バス停横に大型駐車場。展示場あり。 電話0955(22)2039 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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