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青白磁の広口の花器に夕顔の花をあしらった染め付け。多少無造作に花を生けてはじめて均衡が取れるかなというぐらいに大ぶりな花器をつくり続ける。形の大胆さとは対照的に描かれた花はかれんだ。 夏が好きで、夏の花にこだわっている。作品名も「夏」が入ったものが多い。「自分が真冬の生まれなので、夏の力強さにひかれる」と浦郷さん。夏に対するあこがれは、数々の作品群となって生み出されている。真夏の暑い盛りの夕暮れ時に咲く夕顔を見て「ああ今日も一日が無事に終わった」と安らぎを覚えたことがあった。それから夕顔にこだわり始めた。作品は、ロクロで成型して乾かないうちに花の絵を彫り込み、呉須で濃淡を付ける。「呉須の色は深みがあって、何色にも変化する。そこが染め付けの魅力」と、熱っぽく語る。 武雄高校を卒業してすぐに有田町の陶磁器メーカーに就職した。農業を営む両親の元で育った浦郷さんにとって焼き物づくりは全く無縁の世界だった。専門教育を受けたわけではなく、磁器の製作工程や技術は、自然に仕事の中で覚えていった。30歳の時、「きちんと基礎を勉強したい」と、有田工業高校が社会人を対象にした専修科に入学。4年間でロクロやデザインなど基礎的なものを徹底的に学んだ。 「自分なりのものをつくりたい」という欲望と、人に見てもらうことで、きちんと批評を受けたかったことから公募展にたびたび出品。昭和56年の県展初入選以来、数々の受賞、入選歴がある。平成2年に初入選した日展は、昨年までに8回入選している。 昨年、50歳を目前に31年間勤めた会社を退職した。不況下で焼き物業界の冷え込みは厳しく、浦郷さんの勤めた会社も例外ではなかった。会社が希望退職者を募ったのを機に、独立を決意。自宅に「壮明窯」を開いた。今は、7月14日から佐賀市の佐賀玉屋で妻・みどりさんと開く二人展に出品する作品づくりに追われている。 ロクロに向かわない日は、作品のモチーフになる花の手入れをしたり、ミステリーや時代小説などの長編を時間をかけてじっくり読んで過ごす。庭には、すべて種から育てた夕顔をはじめサフィニア、ポピーなど季節ごとに色鮮やかな花が咲き乱れる。花は、何枚も何枚も浦郷さんによってスケッチされ、やがて作品の中で永遠の命を与えられる。 大英博物館へ出品する作品は「その時に持っている自分の仕事のすべてを出したい」と思っている。窯を開ける瞬間が一番楽しい時間だが、できた作品は常に心が残る。日々の作業が「心を残した部分を一つ一つ埋めながら、階段をのぼっているようなもの」と、浦郷さん。頂上のない階段をのぼり続けること。それが次の作品へとつながっていく。 |
■壮明窯 武雄市武内町森の木 JR武雄温泉駅から車で10分、茅場バス停から徒歩30分。 展示場あり。 電話0954(27)3263 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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