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ろくろびきのシンプルな磁器を作る。白磁や青白磁の張りのある器体に1本か2本のシャープな稜線(りょうせん)を組み合わせた洗練された造形美を追究している。 早くから注目された逸材で、30歳そこそこで県陶芸協会の会員に推挙され、いまだに会員の中では一番若い。有田町の藤井朱明氏(朱明窯)のもとに勤務しながらの創作活動だ。 もちろん、独立して自分の窯を開窯していてもおかしくない十分なキャリアを持っている。 寡黙なせいか、仕事場で黙々とろくろに取り組む姿はどことなく古風な職人気質を思わせる。日展入選15回。日本新工芸家連盟会員では2度の審査員経験も持つ。若々しく控えめな外貌からは想像できない立派な経歴の持ち主だ。 「日展に初入選したころ(昭和58年)は、今考えると『ごちゃごちゃした』物を作っていました。それが分かって、だんだん今のようなろくろのフォルムを見せる方向へ移っていったように思います」 ろくろ成型後に微妙な変形をつける手法で、鉢型や筒型の器そのものの存在感を引き立てる。県内の若手陶芸家たちの間でも、ろくろのセンスには定評がある。 かっぽう食器専門の素地屋に生まれ育った。両親の働く後ろ姿を見ながら、自然に焼き物の世界で生きる覚悟を決めたという。 有田工高窯業科に学び、卒業と同時に朱明窯入り。10代から新工芸の西九州地区勉強会に顔を出すなど、機会をとらえては熱心に勉強してきた努力家。 「ここ(窯)にはお世話になっているが、上京なども多くて迷惑をかけっ放しで…」と頭をかく。ただ優れた成型の専門家として職場でも頼りになる存在に違いない。 休日も自宅のろくろに向かって自分自身のイメージ作りに励む。家庭では三児の父。三歳、一歳の双子で三人とも育児に手のかかる最中とあって、奥さんともども何かと多忙。 「おおらかでゆったりした形」を目標に、計算の困難な窯の中の変化をあれこれと想像しながらする仕事が板についた。作品には風格が出てきて、最近の評価では力強さが加わったとの声も高い。 有田の作家として「磁器という素材を生かさねば」と思いが強くなった。「大切なのは素材を生かす物づくりです。有田は伝統ある町だからやはり伝統を踏まえて新しい作品を作っていきます。ろくろに何かをプラスしたような現代的な作品ができれば…」 そして「自分は回りの人に恵まれていると思いますね。中学や高校の先生、藤井先生、それに仕事の先輩方。困ったとき必ず適切なアドバイスをくれる先生もいらっしゃいます」。しみじみと語る。 大英博での展覧会に向けて、協会内ではそろそろ図録撮影の日程なども話題に上るようになった。 「日々やっているのを出すだけです。行ったこともない所ですが、外国の人に作品を見てもらえるというのはすごいです」。きらりと目を輝かせた。 |
■岩永範彦工房 西有田町曲川乙の自宅に展示場を設けている。 JR有田駅から車で約12分。駐車場5台。 電話0955(46)2566 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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