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ゆったりとしたフォルムに青や紫の淡い色調が層をなし、美しい流れとなっている。今村さんが得意とする技法は「練込(ねりこみ)」。色の違う陶土をこね合わせて作る。陶器でよくみられる技法で、磁器では難しいとされる。決して同じものはできない。イメージを固めて制作するが、思いとはまったく違うものができることもある。 「25点作っても、昔はうまくいくのは一点あるかどうかだった。今はさすがに4、5点はとれる」というが、それにしても確率は低い。「難しいから面白い。展覧会で認められたときの喜びは格別。といっても今では、面白さを通り過ぎて苦しみに近いものもあるけれど…」と笑うが、難しさを楽しんでいるようにみえる。 今村さんは佐世保市・三川内の伝統ある平戸藩窯の窯元に生まれた。小学校4年生から父に学び、蹴(け)ろくろを回した。技術は体で覚えた。 ただ、陶芸作家としての本格的な出発は40歳と遅い方だ。現代工芸展で練込の作品が評価を受けた。師の青木龍山氏に「難しいからこそやりなさい」と励まされ、出品するのは練込一筋と決めた。「何でもやってみたがる性格。辰砂(しんしゃ)や青磁などあれこれ試したが、芸術の道はそれではやっていけないんですね」。 仕事と作家活動を厳格に分ける。作品に向かうのは夜や休日だけという。展示室も作家としての作品は事務所二階に並べる。そこをのぞくと、練込はもちろん、青磁や辰砂、釉裏紅(ゆうりこう)…と多彩。難しい技法が目につくところは今村さんの真骨頂といえようか。 一方、「細工人は絵は書かない」ときっぱり言う。「細工も絵付けも、と両立して大成することは難しい。一方だけで精いっぱいです。私は商売(会社経営)までやっているから、『恥はかいても、絵は書けん』と言っています」。 「早く隠居の身になって、ゆっくり作品づくりに専念できるようになりたいのですが…」と笑う。 後進の指導にも情熱を燃やすが、「この道は少しずつしかうまくならないから、成長するのに時間がかかる。根気強くやれる人でないと大成しない」と言う。歩んできた道を振り返っての言葉だけに重みがある。 作品が海外で紹介されるのは平成四年秋、ドイツで行われた日本現代工芸美術家協会の選抜展以来。「焼き物に関しては日本が一番だと思う」というだけに、確かな技術から生まれる今村さんの美の世界が堪能できるに違いない。 |
■陶悦窯 西松浦郡有田町西部甲778 JR有田駅から車で3分、三代橋バス停から徒歩1分。 駐車場約15台。展示場あり。 電話0955(42)3464 |
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このコーナーは平成12年度に開催された、大英博物館佐賀県陶芸展への出品を控えた陶芸作家のみなさんにインタビューを行った記事です。記事は「佐賀新聞」に掲載されました内容を転載しております。 ※作品、作家の写真は、佐賀新聞社提供によるものです。 |
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