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■岩永 浩■Profile
1960年 |
佐賀県西松浦郡有田町に生まれる |
1978年 |
佐賀県立有田工業高等学校デザイン科卒業 |
1982年 |
水墨画家である金武自然氏に師事 |
1985年 |
染付の器づくりをはじめる |
1995年 |
東京にて個展開催 以後各地にて個展開催 |
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骨董のような存在感のあるたたずまいの中にも、モダンな雰囲気が漂う、岩永浩氏の染付の器。陶磁器が数多くならぶショーウィンドーの中で、まるで器が笑っているかのような感じさえうける。その魅力にとりつかれた人は多く、岩永氏は人気作家として多忙を極める。ご本人によるホームページから伝わる人柄も魅力的だ。今回は桜の花が咲き誇るうららかな季節に、岩永氏のお話をうかがうことができた。
―今日はよろしくお願いします。岩永さんはどのようにして、この染付の世界に入られたのですか?
もともと親父が素地(きじ)屋をやっていたのですが、小さい頃からこの有田という環境でしょう。周辺には窯跡などもいっぱいあるしちょっとした広場にもごろごろ陶片が落ちているような場所だから…、子供の頃から陶片を拾うのが大好きで。高校を卒業してから水墨画の先生に弟子入りし6年半ほど勉強しました。でもね、先生がすごくって「オレはあそこまではなれないなあ」とも思っていたのね。先生のエッセンスというのかな、真似するのではなくてエッセンスを学ぶことができたのはとてもよかった!
もともと陶片大好き(笑)だったし、ほら水墨画の墨の濃淡と、染付の濃淡ってそっくりでしょ。器づくりをやるからには、誰もやっていないことをしようと思って、一から半独学で取り組みましたよ。周囲が窯場だからこんな奴は珍しいんじゃないかなぁ。
―そうですね。今でこそ作家さんは何人かいらっしゃいますが、ほとんど窯元さん(製造元)ですものね。
全部の工程をいちから自分でつくらなきゃいけないから、陶土から釉薬までいろいろ研究しましたよ。釉薬は灰を手にいれてそこから自分オリジナルでつくるのね。とはいっても配合の仕方で微妙に色合いが変るし、焼成でも変わってくる。窯元は分業がすすんでいるから自分の工程以外のことはあまり知らない人が多いから、なんでもかんでも一人でやっているのもこの辺りでは珍しいんじゃないかなあ。
幸い、同じスタンスで器づくりをしている友人がいるので、たまに情報交換しあったりして、励ましにはなっている。
―東京で初個展を開催されるまでにも色々ご苦労があったのでは?
そうそう自分で営業しなくちゃいけないから。たまたま親戚がデパートをまわる「全国陶器市」みたいな催事で、絵付けのデモンストレーションをやっていたんですよ。で、ちょっと行けそうにないから、お前かわりに行ってくれないかって頼まれて。それで東京などにもちょくちょく行けるようになって、時間をつくっては会いたい人や行ってみたい店を訪問し始めたのね。自分の湯呑みと皿を持って!
「ここのご主人に認めてもらいたい」というギャラリーがあって、もちろんそこにも器を持っていきました。あとで聞いた話ですが、そこのご主人が実はあの白洲正子さんに「若者がこの器を持ってきたんだけど」と私の器を見せたそう。そしてOKが出て、それからも色々勉強させてもらいながらね。
でもギャラリーに自分の器を置かせてもらえるようになった時に、そこのご主人から「多くの人の目に触れるようになると、ぜったい真似する人が出てくるよ。覚悟をしておきなさい。」と言われました。悲しいことですが、どの業界、どんな商品にだってそういうことは起こりますよね。でも自分の絵柄や雰囲気は真似されても、制作工程や材料がまったく同じな訳はないし、つくった人間のスピリットも違うわけでしょ。
私の器を使ってくれる方は、そういったスピリットまで感じてくれているんだと思いますよ。実際、作家物を好きになる時って、その作品だけではなく作家本人に愛着を持ってくれるというか…。
「あの作家さんは嫌いだけど、作品は好きなのでよく使う」なんて人は少ないと思うよ。(笑)
だからこそ、ギャラリーだけではなくお客さんからも磨かれながら育っていかなきゃいけないよね。
よく知り合いから、大きなイベントに出展したらって言われるけど、「○○が良く売れたから、来年も○○をつくろう」という気持ちになってしまうのが怖くて、絶対出展しないようにしてます。なんかそこで成長が止まってしまうし、次の作品を期待してくれているお客さんに悪いじゃないですか。
―そうですね。私も岩永さんの器が大好きなんですが、近いのになかなか県内で見ることができる場所が少なくて残念に思うこともあります。
九州って身近に陶磁器がありすぎて、かえって陶磁器への関心が薄いと思う。ギャラリーってひとつの審美眼の場所だから、作品を置く側も、見る側にとってもそこで間接的に人を育ててくれるじゃないですか。自分の周りにもこれから伸びそうな若い人がいるけど、なかなかそれをいかす場所がないから「東京に行ってみれば?」とよく紹介したりもしてるんですよ。そういった若い人がある日ふらっと表舞台に登場して、「岩永さんいい人がいるよ、知ってる?」と紹介されたりして(笑)。そんな時はひとごとながら嬉しいよね。なぜか最近は女の子が多いけど(笑)。
―あはは、世間は狭いですね。岩永さんは音楽もお好きなんですよね。
そうロックが好き。仕事中にも聞くし、コンサートにもちょくちょく出かけますよ。東京のギャラリーを訪問したときにご主人に晩御飯を誘われちゃってさあ。実は夕方からコンサートに行くつもりだったんで、「用事があるので失礼します」って帰っちゃって。そしたら後日、ご主人に「岩永さん、○○のコンサートに行ってたんでしょ?」って見抜かれて(笑)。ご主人の息子さんが私のいつものスケジュールから「きっと○○のコンサートに行ってるんだ」って気付いたんだって!
―じゃ、もう公認ですね(笑)
え?そうかな(笑)
展示場、そして作業場にもおじゃまさせていただいた。作業場には絵付け用のおびただしい数の筆があったが、消耗も早いのではと思った。「でも擦り切れた筆も捨てずに持っているんです。新品にはない線が描けたり、それはそれで使い道があるんですよ。」と岩永さん。お忙しい中、色々なお話をうかがったがひとつのポリシーがどんな事にもしっかり筋を通していらっしゃるのがわかる。しかしそんな話も悪戯っぽく笑って話されるひょうひょうとした姿。そんな姿の分身が器なのだろう。
※このインタビューは2004年に行ったものです。
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■岩永 浩氏
西松浦郡有田町西部甲286-2
JR有田駅から車で3分
電話0955-42-2172
展示室・有り
ホームページURL: http://www.hirocks.net/
訪問前に要電話 |
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