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                  ■中里重利■Profile 
                  1930年佐賀県唐津市に中里無庵の三男として生まれる 
                  1952年日展初入選 以後各展覧会へ出品 
                  1973年唐津市神田に窯を築く 
                  1985年佐賀県芸術文化功労賞を受賞 
                  1986年日展評議員となる  | 
                 
              
             
            
              
                
                   
                   ゴールデンウィーク明けの5月初旬、街から離れたひっそりとした緑豊かな場所にある三玄窯を訪ねた。この日はあいにくの小雨でうっそうとした木々に覆われた三玄窯は、しっとりとした空気の中にたたずんでいた。6月に個展を控え少しお忙しそうな中里さんだったが、快く私たちを迎えてくれた。作業場に併設している展示販売所とギャラリーでお話をうかがった。 
                   
                   
                    ―「三玄窯」というお名前の由来はなんでしょうか。普通は作家さんのお名前からとった窯名が多いですよね。 
                   
                   自分の窯をつくってから弟子など一緒に働く人ができましてね。そうなってくると品を販売するときに全て私の名前では売れないでしょう。これは窯名がいるなってことで色々考えたんですよ(笑)。そこで日展に入選した作品の「三玄壺」から名前をとったんです。この壺は橙、赤、黒の三色を施した叩き壺でした。三玄とは「天・地・人」のもと「土・技・炎」の三位一体を表しています。 
                   
                    ―中里さんは昭和5年のお生まれとのことですが、ちょうど青春期は戦中、戦後を過ごされていらっしゃるのですよね。 
                   
                   ええ、当時はどこもかしこも食糧事情が悪く、私も畑仕事が本業のような生活をしていました。食物を作らないと生きていけませんから。そうだなあ、年に2回程窯焚きができたぐらいかなあ。唐津のこのあたりでも本格的に窯をやっているところは2軒くらいで、後は細々とやっていましたね。今でも本当に唐津焼といえるものをつくっているところは少ないと思うけど。昭和23年ぐらいからやっと作陶生活に没頭できるようになりましたね。 
                   
                  ―お若い頃には発掘調査などにも携わっていらっしゃるとのことですが、古唐津の魅力はどういったところにあるのでしょうか。 
                   
                   まず大きなところでいえば、土味ですね。とにかく土の生かし方が素晴らしい。ろくろの線も「速さ」を感じられるし、絵付けも絶妙なバランスで施されている。唐津というと見た目は地味ですけど、とにかく土味のだす魅力がいいんです。例えばね、都会的でおしゃれな八頭身美人には確かにぱっと目がいくでしょう。でもすぐに飽いてくる(笑)。美人なんとかって言葉もあるし。田舎の素朴な人でも、よくよく付き合うと素晴らしいところがある、古唐津の魅力ってそんな感じかな? 
                   
                    ―手を加えすぎていないってことですか? 
                   
                   いやいやそうじゃないよ。ものすごく計算してあるけど、その整い方が大事なんだよ。要は足し算引き算のバランスでしょう。昔は陶工の制作を指導する人がいて、絵付けのバランスから形などをしっかり考えてつくらせていたんだよね。もちろん「こういった茶碗が欲しい」と注文をする人も素晴らしい感覚をもっていたんだろうと思いますよ。 
                  名品は、つくる人の長年の経験と美意識から生み出されると思っています。やきものに限らず芸術家が表現を行う際に必要となってくるのは、この二つです。特に美意識はあらゆることに必要だね。例えば料理人にも必要。素材をどうやっておいしく生かす料理をするか美意識にかかっていると思う。 
                  でもこの美意識は時代によって変化していくものなんですよ。ぎらぎらした物がいいともてはやされる時だってあったわけだしね。どんな時代でも普遍的な美意識は存在すると思うから、芸術家も一般の人もこれを自分で開拓しなければいけないと思いますね。 
                   
                    ―私でもできる「美意識の開拓の方法」はありますか。 
                   
                   まずは固定観念をもたないことでしょう。例えば展覧会などを見に行くとき、前もって作家のプロフィールなどを頭に入れていくのは良くないね。人間、知ってしまえばどうしてもその目で物を捉えてしまう。そうすると自分が本当に感じることや発見が表に出てこなくなるんだよね。何にも知らずに、作品を見ていいなと思うのがあって、別の展覧会でもいいなと思うものが出てくる。後で調べると結構同じ作家だったりするわけよ。自分で色々感じた後に、作家や作品について調べてみたらどうだろう? 
                  肩書きだけで選んだりしていては、いけないと思いますよ。 
                   
                  ―なるほど参考にしてみます。ところで、中里さんは何かご趣味はお持ちですか? 
                   
                   ない!(笑)というよりもやきものが趣味だね。もうこれ一筋です。私は中途半端が苦手なもんで、何でもやり始めると徹底的に凝り出すんでね。仕事にもしているけど、これ(ろくろをひく手付きで)で存分に遊ばせてもらってますよ(笑)。
                   
                   
                   中里さんは丁寧にゆっくりと言葉を選んで話された。しかしその中にも作陶に対する厳しい姿勢や、芸術家に問われる能力、古窯跡荒らしなどの悲しい現実などをずばっとご指摘された。
                  お話をうかがっていると、芸術に対するご自分の姿勢を貫いていらっしゃるのだなと感じた。 
                   
                  ■関連リンク 佐賀の陶芸作家・中里重利 
                  ■関連リンク −作陶55周年−中里重利展 
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                  ※このインタビューは2001年に行ったものです。 
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                  ■中里重利氏・三玄窯 
                  唐津市神田山口 
                  JR唐津駅から車で約10分 
                  電話0955-72-8664 
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