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丸田宗彦氏 name
■丸田宗彦■Profile
1961年佐賀県武雄市黒牟田焼の窯元に生れる
1980年益子・浜田篤哉氏の元で修行
1978年内田皿屋窯を開く
1993年以降黒田陶苑・梅田阪急等で個展開催
2001年4月20日〜25日東京渋谷「黒田陶苑」にて個展開催予定

 3月初め、丸田さんの元を訪れた。この日佐賀県内はたいへんな悪天候だった。強風と雪に見舞われている中、丸田さんは登り窯の窯焚きを始められていた。4月に東京での個展を控えての窯焚きということで、少し緊張しながらの訪問となった。560坪程の広い敷地内に工房・展示場・窯があり、展示場の作品に囲まれながら、あるいは窯の炎を前にと場所を変えながらお話を伺った。


photo―丸田さんは、浜田篤哉氏(益子)の元で修行なさっていますが、弟子入り生活の中で思い出深いことといえば。

そうですね、やきものの技術を学んだのは当然ですが、益子での生活は感性を磨かせてもらいましたね。浜田先生は、生活の色々なことにこだわったり、手間隙を惜しんで楽しまれることをなさっていた。例えば「おいしい店がある」「いい作品がある」と聞けば何時間も車を飛ばして出かける。それに私もついて行って、見聞が広がったのと、感動を大事にするということを教えていただきましたね。

―佐賀に戻られたのは、どうしてですか。

若いうちに異なった環境に身を置くのは貴重な経験になるよ。益子に行って佐賀の良さを再認識しましたね。佐賀はやきもの歴史が長い。子供の頃を思い出せば、そこいらに陶片がごろごろあったのを間近で見ていますし、そんな環境でやきものをやらなきゃどうするって気持ちになった。それで、佐賀に帰ってどうせなら歴史のある古唐津を自分なりに取り組んでみようと思いました。

photo ―自分なりの古唐津とは?

古唐津の歴史は長い、その時々で変化もあるんですよ。桃山時代には桃山の古唐津。江戸時代には江戸の古唐津。私は現代、この時代の古唐津をつくりたいということです。私はつくる時、いつも重さに気をつけたり、すっきりした形を心掛けています。私自信、重い器はあまり好きではありませんし、使って気持ちがいいものが、結局は飽きずに長く使ってもらえますから。花入れなんかも、作陶し始めたころは「好きなように使ってくれればいいさ」という考えでしたが、今は違いますね。自分が花を生ける時どうだろうか?椿をいれたらどうなるだろうか?と想像しながらつくっています。
作家にとって「使ってもらう」ということが、自分を磨かせていただくという感覚があるんですよ。

―材料などもご自分で集めたり、陶片などを研究されているそうですが。

そうですね。土も色々自分で採ってきます。釉薬は、農家からいただいた藁を使ってつくります。自分で納得のいく仕事をしたいから、あたりまえのことをやっているだけだと思う。古唐津というからには、なるべく昔からの方法でつくらないと。調合されてお店で売っているような土で焼いても、古唐津じゃないでしょ。悪い土でも使いますよ。人間はどうしても自分に合わせてしまう。自分の焼き方に合わせようとするから「悪い土だ」ってなっちゃうわけで。土に合わせて焼けば、はっとするものも生まれます。
時間があれば古窯跡を観察して「ここでどんな焼物ができていたんだろう」とか考えたりね。

―4月に個展を開催されますがテーマは?

photo 昨年、穴窯をつくりましたのでそれで焼いたのを中心に出展します。今年の1月にも穴窯で焼いたんだけど。(作品を木箱からとりだして)この茶碗もその時焼いたものです。自分なりに新しいことに挑戦しているので、そういったところを見ていただければなと思っています。

―年に何回焚かれるのですか。

7〜8回ぐらいです。自然の材料を相手に仕事をしているんで、毎回いろいろな変化がありますよ。例えば土が同じでも焼き方で違った変化が生まれますよね。この変化が楽しくてやっているんですけど。せっせせっせとこの繰り返しかな(笑)。こつこつやることで、体でわかるというか、はっと気付くことってありますから。

―お忙しそうですね。何かご趣味は。

海釣です。今、はまってますよー。(笑)釣に行くまえに道具揃えたり、船の手配をしたり、その時点からわくわくしますね。こういった時間は大事だと思っています。わくわくしたり、生活の中で小さな感動をすることを心掛けていますから。自分の子供にもそういった感動を体験してほしいから、なるべく一緒に連れて行きます。自然の中で作陶のヒントを発見することも結構あります。例えば自然の力で何年もかけてつくられた岩場の形。これを花入れの面取りに生かしたりとか。

―小さな感動…?。

そう、最近はどこに行ってもコンビニがあって、同じ物が普通に買えて。同じ情報があふれていて。感動する機会なんてあまりないような気がしますね。これじゃ若い人の感性もなかなか磨けない。

photo ―感性を磨くためのアドバイスをお願いします。

自分の感覚でいいものを見つけてくることが大事だと思います。その為には遠回きで見ているだけではだめ。手に入れてそれを手なづけるっていうのかな、自分なりのものにする。そして物足りなくなったら、次のステップへすすむんです。ある程度自分への投資が必要だと思います。いいものを見つけだして手に入れる時のどきどき感や、使いこなそうとする時のわくわく感を、ぜひ若い人たちに味わってほしいです。


photo  個展に出展される予定の茶碗を見せていただいた。絵唐津であやめの姿が施され、艶を消した淡い鼠色の作品だ。艶がないせいだろうか、鼠色が自分に深く染み込んでくるようだ。展示場にある作品たちは、徳利・花入れ・茶碗・向付と様々。なぜか、どの作品も空にすうっと伸びていくよな上向きの印象がしていた。常に前向きな丸田さんの姿勢が表れているようだった。

※このインタビューは2001年に行ったものです。
photo ■丸田宗彦氏・内田皿屋窯
武雄市東川登町永野
JR武雄温泉駅から車で約15分
電話連絡してからお越し下さい。
電話0954-23-3792
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