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香蘭社研究開発部
こうらんしゃけんきゅうかいはつぶ


 香蘭社といえば、有田焼の老舗ブランド。ご存知の方やファンの方もおおいことでしょう。今回は一般食器部門ではなく研究開発部門におじゃましました。ここでは電線などの絶縁体として使用される工業用磁器「碍子(がいし)」のリサイクル商品を開発されています。実は香蘭社さんはこんな製品も製造されていたのです。ご存知でしたか?お話を研究開発課長の竹下さん、主任の岸川さんにおうかがいしました。


―こんにちは、よろしくお願いします。香蘭社さんには何度かおじゃましたことがあるのですが、正直「碍子」を取り扱っていらっしゃることは、あまりよく存じあげていないのです。

 (竹下さん)香蘭社というと、一般の方にとっては「食器」のイメージが強いですからね。実は香蘭社の碍子製造は日本で一番古いのですよ。日本で初めて香蘭社が通信線用碍子製造に成功しました(1870年)。それから今日まで、130年以上も続いている製造部門なんですよ。そちらに飾っているコイルのような陶磁器が碍子で、絶縁体として使用される部品なんですね。電柱を見上げると、よく見かけるでしょう。
香蘭社はこの碍子だけではなく、ファインセラミックスの部門にも力を入れており、液晶プロジェクタに使用される反射鏡を石英ガラスで製造しています。実は石英ガラスで反射鏡を製造できるのは今のところ、世界でも香蘭社だけなんです。

―そうなんですか!香蘭社さんというと華麗で美しい食器、というイメージが強かったので驚きました。ところで、この碍子を利用したリサイクル商品を新開発されたそうですね。

 (竹下さん)ええ、昨年の5月から開発(基本技術は数年前に確立)を始め、今年(平成15年)の有田陶器市に、初めて大々的に一般販売した商品なのですが、こちらの室内ガーデニング用の人工軽石です。「楽癒宇石(らくゆうせき)・セラーズロック」という商品名です。

 (岸川さん)この人工軽石は苔や観賞植物などを育てるのにぴったりな秘密があるんです。よく見ていただくと分かりますが、小さな孔(あな)がたくさん空いています。これを多孔質磁器というのですが、これのおかげで、優れた吸水力・保水能力が確保できます。そして空気もよく含みますので、根ぐされしにくい特徴があります。また小さな孔は沢山ありますが基本的に磁器ですから、煮沸消毒もできるんですよ。植物観賞だけでなく、この小さな孔を利用して水槽の中に入れる景観石(泡も出せます)として使用できる様に試作中です。
実はこの孔の大きさをどうするかが、開発で苦心したところの一つなんです。植物による吸水率とぴったりマッチする孔の大きさをあれこれと試しました。

―碍子がこんな姿に再生されるなんて!

 (竹下さん)そうですね、大胆な変身です(笑)。碍子を製造するときには、やはり屑がでます。また使用済みの碍子と合わせて、何か有効利用ができないかと模索していました。リサイクルさせることはもちろんですが、せっかく環境負荷を考えるのであれば、リサイクル製品を使う人にとっても「遊びと癒し」をご提供したいなと考慮しました。もちろんこれまでも、碍子は道路の舗装材や建材などにもリサイクルされていましたが、私たち香蘭社はやはり、一般のお客様に楽しい暮らしをご提案したいということで、インテリア方面に目を向けたんですね。まあ、大変だったのは「楽癒宇石」の製作よりも植物をどう植え込むか、どんな植物をセッティングするかでしたね。専門じゃありませんから。みんなで必死に勉強して、試行錯誤しながら育てやすく美しい苔を探してきたり…。

 (岸川さん)この「楽癒宇石」というネーミングも社内公募で決めたものです。またこういった植物観賞を若い人にも親しんで欲しいと思い、苔を植える石のデザインも若い女性デザイナーに担当してもらったり。形づくりもひとつひとつハンドメードでつくっています。観賞植物を通して和み、そして環境問題への意識を持っていただければ嬉しいですね。

―わあ、なんだか私もオフィスのデスクで苔を育てたくなってきました(笑)。

 (竹下さん)そう思っていただけるとうれしいですね。今年の有田陶器市では、「香蘭社にこんな商品があったの?」と驚きとともに、簡単に植物を育てられることから「何だか楽しそう」と多くの方に喜んでいただけました。せっかく楽しいものをご提供しようと考えたのだから、販売も楽しくと考えまして、小さな商品は金魚すくいで金魚を入れてもらうビニールの巾着袋に入れてお渡ししました。これは子供さんから大人まで喜んでいただきました。やはり生活には「遊び」が大事ですからね。 
今後も陶磁器を通して、楽しい生活のご提案、ニーズに合った商品や環境負荷などの時代に沿った開発を、香蘭社の歴史を通してすすめていければと思います。

 「リサイクル商品はお値段が高いという印象がありますから、『楽癒宇石』は手頃にたのしんでいただけるようにしています。」と竹下さん。確かにハンドメードでつくっていらっしゃるのに、手頃なお値段で販売されていました。実際私も「リサイクル商品は高い」と思っていた消費者の一人でしたが、環境のことやお客様の楽しみをも考えて様々な開発をされているのをうかがうことができました。
「楽癒宇石」は、現在香蘭社有田本店のみにて取り扱い中です。(展示室有・但し平日のみ)また関西地区の香蘭社の器ファン向けに朗報。大阪市西区に香蘭社大阪ショールームがオープンしました。(大阪市西区新町1丁目2-13 新町ビル1F)お気軽に足をお運びください。
※「楽癒宇石」に関してのお問合せは、香蘭社有田本店営業部・山領さんまで
DATA
■香蘭社有田本店
所在地 〒844-8601 佐賀県西松浦郡有田町幸平1-3-8
電 話 0955-43-2133
展示場
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店休日 お盆(7・8月)・年末年始(お出かけ前にお電話ください)
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