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初めて見た、けい工房の作品は、陶磁器にガラスビーズという異素材を組み合わせて作られたオブジェでした。その作品を手にとると、愛らしさと、ほんわかした雰囲気にちょっぴり幸せな気分になってしまったのを覚えています。どなたがつくられたものなのかを尋ねると、有田「けい工房」の若手作家・村尾京子さんであることが判明!もっと他の作品が見てみたいと思い、展示場と併設された工房へおじゃまさせていただきました。 ―こんにちは、今日はよろしくお願いします。あ、このビーズと組み合わされた作品は以前見たことがあります。 ありがとうございます。陶磁器も大好きなのですが、ビーズやガラスといった透明感のある素材にもあこがれるものがありまして、作品のアクセントとして使ってみたのです。小さい頃から、細々としたものが好きで(笑)、その名残かもしれませんね。今は作品づくりでも、やりたいことが無限にあるのですが、陶磁器と異素材との組み合わせもそのひとつなんです。一人で工房を構えるのはそれなりに大変ではありますが、アイデアを出してすぐ実行できるフットワークの良さが醍醐味でもありますね。 こちらのランプシェードは、くり抜いた窓の部分に針金で編んだビーズをはめ込んでみました。これも「あっ」と思いついて、いそいそとビーズ編みをしたんですよ。 ―ちらちらと輝くような光が和みますね。有田のご出身とうかがいましたが、ご実家も窯元さんだったのですか? いえ、家は電気窯を製造する仕事をしておりました。私はもともとデザインが好きだったので、高校生の時は漠然とキャラクターグッズをつくる仕事や雑貨店を開きたいなと考えていました。進学する際に、先生から「せっかく有田にいるのだから、陶磁器を立体デザインのひとつと思って勉強してみたら」とアドバイスを受け、有田窯業大学校へすすみ、卒業後は3年ほど有田の窯元で働いていました「役に立たないものをつくってしまえば、それは産業廃棄物になってしまう」と在学中の先生の言葉に、作り手としての「責任」をひしひしと感じ、今でも心に留めています。 初めて土に触れたときは、なにもないところから形をおこす作業がとても難しく感じられたことを覚えています。ところがやり出すうちに、立体の魅力というのでしょうか、紙上のデザインとは違って360度から形が作り上げられていく様にとりこになったんです。難しいのですが、おもしろい。いわゆる「はまっちゃった!」という感じですね(笑)。 ―なるほど。制作のインスピレーションはどういうところから思いつくのですか? そうですね、お散歩したり日向ぼっこをして幸せな気分になっている時に思いついているようですね。やぱっり人を幸せ気分にする物は、作る人も幸せでないと。物には自然と作り手の心が投影されてくると思うのです。とはいえ、私の場合は土を触っていると、嫌なことがあっても幸せな気持ちになってくるんですけどね(笑)。また、遺跡に描かれた原始文様などからもインスピレーションを受けます。あのプリミティブで、思いやパワーのこもった文様からは、時を超えた何かを感じます。派手でもないし、幾何学のシンプルな文様でも、その文様に託した原始の人の希望が詰まっているんじゃないかと思うのです。食器は口にするものですから、また違ってきますけど、オブジェにはこうしたパワーを注ぎこみたいですね。 こちらの花器もそうしたヒントからつくったものです。形は「豆」をイメージしています。自分でも気にいっていますが、このたび購入していただくことが決まりました。もう、お嫁に出す気分ですよ。「しっかり可愛がってもらうんだよ」って(笑)。お嫁に行くまでは、私がしっかり可愛がろうと思ってこうやって、いただいた花を活けています。(汚れないように、中にビニールが) ―それで食器とオブジェの雰囲気が違うんですね。ところで村尾さんの食器はほんとにほのぼのとした温かみを感じます。 そういっていただけると嬉しいですね。有田のきりっとした磁器もいいのですが、私はあたたかさやほっとした空間をつくりあげたいと思うので、クリーム色の半磁器で作っています。成形はほとんどが手びねりで行っています。手びねりですと、自分の速度で一つ一つに個性を与えながら、気持ちを込めるようにして作ることができるんですね。またこれもやってみると奥深いんですよ。器を持つ手も、その人それぞれ違いますよね。だから個性ある器たちを作って、その中から「これは私の手に合うな」というものを選んでいただければと考えています。使う人の手に馴染み、「ほっとするな」と言わせたい。使う人に幸せな気持ちが生まれるような器をつくりたいですね。ちょっと、手びねりの作業をご覧になりますか? (作業台に移動して…) まず、土を玉状にします。そして中央に凹みをつけて、指を入れます。そして自分の体を中心に、手を回転させて…。はい、これで湯呑みの形は、ほぼできあがりです。 誰かに習ったわけではないのですが、模索しているうちにこの成形法を編み出したというか。色んな作家さんに聞いても「そんなつくり方はしたことない」と言われます。 ―うーん、こんな成形法初めて見ました!村尾さんの腕がろくろになってます。最後に村尾さん流の器の楽しみ方を教えてください。 そうですね。まずは器を一つの用途に縛られずに、いろんな用途で使ってみると新しい楽しさを発見できるものですよ。また陶磁器が粉々に砕けてしまうまで、使える工夫を考えて欲しいなと思います。食器が少し欠けてしまったら、キャンドルたてや金魚鉢、植木鉢としても使えます。陶磁器は硬くて何もしゃべりませんが、生きています。陶磁器は、私たちの生活をちょっとだけ幸せにしてくれるアロマテラピーのような存在です! 「人形の顔を作っていると、『ニコッ、ニコッ』と呟いている自分に気付くんですよ。自然と私の顔もにっこりしていて。」とコロコロと笑いながら話す村尾さん。村尾さんの器を手にしたときの、ほんわか気分と同じく、ご本人とのお話も和やかな雰囲気で、つい長時間居座ってしまいました。ぱっと見たところ、ほのぼのした食器とパワーあふれるオブジェは二面性があるようですが、根底にあるものは同じではないでしょうか?そこにあるものは「幸福になりたい」という人間のシンプルな希望からくるエネルギーなのです。村尾さんの飾らないお人柄から、そのエネルギーがダイレクトに作品へとつながっているのでしょう。 |
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