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かわいらしいだけではなく、何か心にひっかかる、何か想像力をかきたたせてくれるような器。そんな器にはじめて出会ったのは、とあるホームページ上でした。一体どんな方がつくられているのだろうと調べると、有田在住の陶芸作家、林田さなえさん。有田ではちょっと異色の若手陶芸作家として、個展や陶磁器イベント、クラフトデザインの展覧会などで活躍されています。 元気な子供たちの声がひびく有田中部小学校のすぐお隣で、工房を構えていらっしゃいました。 ―こんにちは。うわあ、たくさん作品が並んでいますね。なんだかワクワクしてきます!まずはこのお仕事をされるきかっけを教えてください。 そうですね、高校生の頃は普通の大学に行って、普通の仕事をするもんだと思っていたのですが、受験前に「このままでいいのかしら?将来楽しい仕事がしたいな」と思うようになったんですよ。それでもともと、手を動かすのが好きだったので、グラフィックデザイン科のある学校へ進もうと思い立ったんです。有田窯業大学校とグラフィックデザイン科のある学校を受験したんですが、窯業大学校は学生の年齢層がとても広いんですよ。受験の時にそれを見て「ここはおもしろいかも!」と直感で窯業大学校へすすみました。とくにやきものをやりたかった訳ではなかったんですよ。直感です。いつも直感で動くんですよ(笑)学校を出た後は、しばらく窯元で務めていましたが、1997年に半独立、2000年に独立しました。 ―ということは、作品の制作も直感ですか? そうですね、直感に近い部分で制作していると思います。言葉で表現するのは難しいのですが、自分の中から出てくるものを陶磁器という素材を使って表現しています。「柔らかいラインのものが多いですね」とよく言われますが、計算してつくっている訳ではないんですよ。私の中から出てくるもの、私のラインといっていいかとは思いますが、それが自然に作品に出るのだと思います。 たまたま私は、やきものの事をあまり知らずに勉強をはじめたので、「やきものとは、こうあるべきだ」という観念がありませんでした。そういうこともあってか、土という素材を用いて自由に表現をするのが楽しいですね。やきものを通して、楽しいくらしへの提案ができればと考えながら取り組んでいます。。 でも私の個性が表現された器ですので、気にいってくださる方とそうでない方とはっきりわかれます。(笑)私の作品がもつ「何か」にひかっかって下さる方は、とことんのめり込んでくださいます。そこはやはり感性の繋がりがあるからじゃないかなと思うんです。使ってくださる方、見てくださる方と作品を通してコミュニケーションをしているのだと思いっています。 一人で制作の全工程や、販売なども行っているので、正直大変なんですが、私の作った作品が、誰かの生活の中で息づいてくれると思うと、ありがたくって、楽しくって。 ―ということは作品を通して、感性が出会うということですね。ところで、見渡したところ、家や動物、幾何文をモチーフにしたものが多いようですが。 はい、動物好きなのでよくモチーフに使います。家や街並みも私にとっては魅力的なモチーフで、よく使うんですよ。「どこの国の家ですか?イタリア辺り?」なんてよく聞かれますけど、どこのものでもありません。佐賀の家並みを見て、いいなと思うところを表現しても、こんなグラフィックになります。おもしろいと思って見たものが、私のフィルターを通って表現されると、こうなるという感じでしょうか。興味のあることには、猪突猛進なんですよ!興味のないことは、まったく覚えないし。(笑)そうだ!私、おもちゃの「リカちゃん人形」世代なんです。小さい時、「リカちゃんハウス」が大好きで、いつも持ち歩いていたんです。そういうところから家に惹かれるのかも!屋号を「Sanae House」としたほどですから。幾何文もよく用いますね。アステカなどの古代文明美術が好きなんです。あのシンプルだけどプリミティブな表現の力強さに興味をそそられますね。 ―どうやら私も林田さんの感性にひっかかるようです。(笑)もう、さっきから作品が気になるんですよ。あの足付きの器を見せていただいてもいいですか?形もですが、黒とシルバーの色の対比もおもしろいですね。 ええどうぞ。これは特に用途を考えたものではなく、花入れやアクセサリー入れ、またはオブジェとしてお好みで使ってもらえたらと…。鹿児島で個展を開催した時に、この足付きの器に剣山をいれて花をいけていました。とあるご婦人がこれを購入され、「私には今悩みがあります。でもこのぐんぐん上へ伸びるような器を見ていると、しっかり立っている人に見えて、元気が出てきました」とおしゃったんです。自分の生活の中で感じたことを陶磁器を通して、相手に伝わればと思っていますので、こんな風に感じていただけると、とても嬉しいですね。 ―あれ、ひとつひとつ微妙に絵付けが違うような。 あはは、そうなんです。同じものは作らないですね。その時どきの表現したいものを作っていますので。ご要望があればもちろん同じものも制作します。このマグカップも、持ち手がちょっとづつ違うんですよ。カップなんかも耳をつけたり、つけなかったり。「用の美」というよりもおもしろさや楽しさでしょうか。 ―今後の抱負をお聞かせください。 はい、今後も自分の手や心がおもむくままに、素直に自然にモノづくりを続けていければと思っています。 にこやかで終始明るい笑顔の林田さん。楽しくお仕事をなさっているのが伝わってきました。お客さんの中には長時間、工房内の展示を楽しまれ、林田さんも忘れていたような奥から「この作品が気に入りました」と、手にされる方もいるのだそうです。林田さんがよく口にされた「感性」・「直感」というものは目にはみえませんが、人との繋がりも生み出すんだなと感じました。次はどんな作品を見ることができるのか、とっても楽しみな作家さんのお一人です。 |
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