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陶磁器というと「器」を思い浮かべる方が多いのでは?今回は「アクセサリー」を専門に制作されている、「陶芸タチカワ」さんにおじゃましました。伊万里津大橋に程近い郊外に、立川さんの展示場兼お仕事場があります。展示場の裏には竹林が生い茂り、緑豊かなのどかな風景が広がるところです。伊万里津大橋というと、国道204号線にかかる架橋で、伊万里川の最下流に位置しています。「津」とは港町のことを示しており、この伊万里津からその昔江戸時代に、ヨーロッパなどへ伊万里焼が輸出されていったのだそうです。この他にも伊万里市街地には橋が多く、立川さんはその中の一つの橋の名付け親でもあるのだとか! ―はじめまして。うわあ、たくさんのアクセサリー、宝石箱みたいですね!窯元さんというより、ブティックにおじゃましたような気分です。 そうですか。実際他店での販売も、やきもの店よりアパレル関係のお店で多く取り扱ってもらっています。自分では「やきもの」を作っているというより、「装飾品」を作っているという意識が強いですね。たまたまアクセサリーづくりの素材のひとつとして「磁器」があり、その素材の魅力で新しい私なりのアクセサリーを表現できるのではと思ったものですから。 ―あのー、全部磁器製ですよね、割れないのですか? ははは!(笑)よくお客様からも聞かれるんですよ!例えばお茶碗を落として割ったとしましょう。すると小さなかけらができますよね。そのかけらをもう一度落としても、小さくて割れにくいのです。やきものというと皆さん「器」のイメージが強いので、「割れるのでは?」と心配なさるようですね。サイズの違いもありますが、さらに割れにくい製法で作っていますので、普通にアクセサリーとして使っていただく分には、まず心配ありません。また少々大きめの物は中を空洞にしていますので、見た目よりとても軽く仕上がっています。 とはいえ、身に付ける物ですから、納得して楽しくお使いいただきたいので、お客様の声をしっかりお聞きするよう心がけています。ホームページでの販売も行っていますが、現物を見ずに購入していただく訳ですから、特にこういった姿勢が重要ですね。おかげさまで海外の方にも喜んで使っていただけています。昨年(平成13年)は、ロサンゼルスで開催された、ジャパンエキスポ2001にも参加させていただきました。 ―ところで、このお仕事を始められたきっかけは何ですか? はい、若い頃に有田焼の商社で営業として働いていましたが、その後独立しました。初めは販売として独立していました。お客様から「こういう物が欲しい」「こんなデザインの物を売って欲しい」というご要望にこたえるため、あちこちを探しまわりましたが、なかなか要望とマッチする商品が見つからない。「要望通りの商品があれば、きっと売れるのに…」と日々悩んでいたのですが、「だったら俺がつくろう!」と一念発起して制作の世界へ足を踏み入れることになったのです。それからは試行錯誤の毎日でしたね(笑)。やきものと接してはいましたが、つくるとなるとまったく別世界ですから。 でも、素人だったおかげでとんでもないことにチャレンジでき、その結果どこの窯元もやっていないような制作方法を身につけることができました。 ―具体的にはどういった方法なのですか。 ちょっとこのペンダントを見てください。全面に釉薬がかかっていて、つるつるでしょ。普通は焼成する時に、釉薬がくっつかないようどこか一面だけ釉薬がかかっておらず、がさがさした面があるはずなんです。器でいうと高台の部分、いわゆる器が床と接する面がそうですね。これはお客様の「アクセサリーだから、全部つるつるにできないの?」という一言がきっかけで研究しました。やきものの技法をご存知の方からは「どうやって焼成したのか?」と不思議がられますが、企業秘密です(笑)。このほかにオリジナルな装飾技法として「金彩貫入」や「伊銀アート」という技法もあります。「金彩貫入」は、素地と金彩の収縮率の違いを利用した華やかな装飾です。「伊銀アート」は銀粘土と呼ばれる素材と磁器とをコラボレーションしたものです。どちらも導入するまでには研究の日々でしたが、民芸調にはない現代的なデザインのアクセサリーデザインを表現することができるようになりました。最近では、和の素材である「組み紐」とのコラボレーションにも挑戦し、新しいアクセサリーの世界を広げているところです。 ―なるほど!ところで立川さんは、伊万里市街地にある橋の名付け親だと、うかがいましたが… ええ、そうなんですよ。伊万里駅から車で2分ほどの場所にある橋なんです。新しく橋ができるということで、名前が公募され、見事採用されました。名前は「夢生橋(ゆめおいばし)」。橋を渡る人に夢が生まれ、その夢が実現するように祈って命名しました。 ―素敵な名前ですね!帰りに渡ってきます!今後はどういった活動を考えていらっいますか。 そうですね、「組み紐」などの異素材とのコラボレーションを展開しながら、また人の心に訴えていくような作品をつくりつづけたいです。アクセサリーは人の生活を豊かに演出してくれるものですから、芸術性を高めていきたいですね。「やきもの」だからという視点からだけではなく「ファッション」として認知されるように! 「夢生橋」の名の通り、ご自分の夢を実現するために常にチャレンジ精神で取り組んでいらしゃる立川さん。「お客様に喜んでいただけると、本当に嬉しいです」と顔をほころばせてお話されているのが、印象的でした。アクセサリーというと女性の物というイメージがありますが、意外にも男性用のネクタイピンやループタイなども人気があるそうです。人とは違う自分らしい演出をしたいというニーズにマッチしているのではないでしょうか。ひとつひとつ心を込めて手づくりされている立川さんのお話をうかがっていると、アクセサリーは美しさだけではなく、その人が身につけることで自信や楽しさを演出してくれる、いとおしい存在なのだとあらためて感じました。 |
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