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梅があちらこちらで花咲く2月の小春日和の日、有田焼の窯元「幸楽窯」を訪ねました。JR有田駅から車で約5〜6分、有田焼卸団地の近くに幸楽窯はあります。創業はなんと慶応元年(1865年)という老舗の窯元で、5代目に当たる徳永隆信専務にお話を伺いました。 ―幸楽窯さんというと、一般食器や割烹食器に加え、特許製品やアイデア製品などユニークな商品を開発されているのがとても印象的ですが、どうやって商品開発をなさっているのですか? そうですね、中心的な商品は錦手の食器ですが、アールヌーボーのデザインを取り入れてみたり、割烹食器では、お料理を華やかに見せ且つ楽しく食事ができるようにと器に高低差をつけ、文様を入れる位置にこだわったりしています。とにかく試行錯誤といった感じでしょうか。私の場合ですと、身の回りにあるものや、起った出来事を常にやきものに結びつけて考えているような気がします。それと私たちのような若い人でも意見を述べたり、新しいことに挑戦できる社風にもあるかと思います。この特許出願中の「レンジエッグ」という器も、私の家庭生活の中から生まれたようなものです。 ―あ、これ見たことがあります。電子レンジで簡単に目玉焼きがつくれる器ですよね。 ええ、実は当社の社長(専務のご尊父)は健康志向で毎朝、自分で目玉焼きを焼いて食べるんですよ。ところが、フライパンで焼いた後、食べたお皿やフライパンは油がついているから洗剤で洗わないといけないので、結構面倒くさい。また食事に残り物が出たら、いちいちラップで蓋をして保存するので、何だかもったいない。という2点を解決するものを別々に考えていたら、この器にたどりついたんです。また最近では、旅行先で見た桂離宮の灯篭の曲線美にひかれまして、それをヒントに蓋物をつくりました。実はこれ内皿がついていて、中に氷などを入れてお料理を冷たく冷やしたまま、配膳できるようになっているんですよ。やっぱり食事は見て楽しく、食べて美味しくないといけませんから。 ―なるほど、アイデアのヒントはあちこちにあるわけですね。すでに特許登録されているベストセラーの醤油さしも見たことがあるのですが、真似をされるんじゃないかしらと少し心配なのですが。 うーん。実はこんな話があるんですが・・・。「良いデザインが出来ると後で必ず真似をされる。しかし、真似をされたということは自分で流行を作れたということ。まだまだ魅力ある製品が作れたというバロメータなわけです。」これは、イタリアの小さな家具工房の職人さんから聞いた話なんですが、実に前向きで素晴らしいと思いましたね。私たちも頑張って流行を創っていくんだという気持ちで取り組んでいきます。 ―ところで、専務は何歳頃からやきものの仕事を意識するようになったのですか? もう物心ついた時からですね。小さい時から自分はやきものの仕事をするんだと思っていましたから。いつも何かしら新しいことをするのが好きだったので「大きくなったらこんなのをつくるぞ」、「今はこんな器はないけど、きっと僕がつくってみる!」と思っていましたね。 でも商品開発をするにあたっては、やはり社長の長年の経験からくるアドバイスには頭が下がります。便利さや新しい発想だけではなく、美しさや使う楽しさを大事にしている視点は勉強になります。 ―やきもの以外で何かご趣味はおありですか? コンピューターと車です。コンピューターでは特にアップル社の製品が大好きです!(笑)アップル社の製品は、持っていて満足できるデザインに惹かれます。電源を入れなくてもはえるパソコンなんて、他に無いですものね。車はラテン系の車が好きです。馬力とか性能よりも、主義主張の入ったデザインが好きです。両者とも経営者が欲しい物をつくってるというパッションに共感を持ちます。結局、立体デザインとして物事を見れば、やはり自分の好きな物の中で暮らしたいなと思いますから。当社の焼き物も、所有欲をくすぐるような夢や楽しさを感じていただける器を作り続けていきたいですね。 幸楽窯さんは、昭和42年生まれというお若い専務のアイデアと、長年の経験からくる社長の技で見事に二人三脚で走っていらっしゃるのだなと感じました。失敗を恐れず常に前向きで、どんどんアイデアがあふれ出ているような専務の軽やかな口調に、私も元気をいただいたようです。幸楽窯さんの主力商品は豪華な錦手の器だそうですが、今春は有田焼の白磁の美しさを追求した器も手がけていらっしゃるそうです。 |
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