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寄贈記念「THE LAST EXHIBITION
柴田コレクション展パート8
―華麗なる古伊万里の世界―」その1

<会期:平成14年10月4日〜12月1日>
平成14年10月4日

 毎年、佐賀県立九州陶磁文化館で開催されてきた柴田コレクション展、これは柴田ご夫妻から寄贈された古伊万里作品「柴田コレクション」を紹介するものです。今回で8回目をむかえ、最後の寄贈記念展として、華やかに開会しました。展覧会初日となった10月4日は陶器の日。会場には、たくさんの方が詰めかけ、汗ばむくらいの熱気に包まれていました。開会に先立ち、柴田ご夫妻から「江戸時代の肥前磁器生産が、どのように変遷していったかをコレクションを通して見ていただけると思います。いろいろな角度による研究を踏まえながらの蒐集も一段落しました。この素晴らしい先人の伝世品を後世にしっかりと伝えていきたいものです。」とのご挨拶がありました。

 会場には参考作品も含め1727点+参考の土型2点という過去最高数の作品が展示され、見ごたえのある内容となっています。「行ってきました見てきました」では、その内容を2回に分けてお届けいたします。
初日には学芸課係長を務めていらっしゃる家田さんによる一般向けの展示解説も行われました。また副館長・大橋さんからもご説明を伺うことができました。
今回の展示は、江戸初期から幕末までの古伊万里の変遷を、順を追った8つのコーナーに分けて展示。最後の9つめのコーナーでは、参考作品として中国陶磁の器がありました。

 第一のコーナー「1.古伊万里の始まりから技術の完成」では、1610年代に始まった有田磁器生産から、有田磁器の海外輸出が本格化する1650〜60年代。そして17世紀後半には磁器生産が技術的な完成期を迎えるまでの流れを見ることができます。初期伊万里の力強い染付、柿右衛門様式の作品など、コーナーの始まりからその迫力に圧倒されます。「ぜひこの作品に注目してください」と大橋副館長がご紹介されたのは「染付獅子牡丹文輪花大皿(1660〜70年代)」。径が35cm程の大きさで、器面いっぱいに流れるように獅子と牡丹が配されています。文様のデザイン的美しさとともに、この時代の最高技術によって生産されたものだそうです。皿の口縁から中央にむかって、染付のグラデーションが広がり、宝石のような輝きさえも感じてしまいます。描かれている線にも躍動感があり、書画を見ているような気分にもなります。

 次コーナー「2.普及をめざす新装飾技法の登場」では、17世紀末の印刷技法による作品が並びます。型紙摺り、コンニャク印判という文様の印刷技術によって、安い価格の磁器が生産されるようになり、庶民に向けても普及していくようになるそうです。そして三番目のコーナー「3.古伊万里の爛熟期」。ここでは1690年代頃に延宝様式が衰退し、元禄様式が誕生します。また豪華絢爛な金襴手の作品も並び、町人文化隆盛の元禄文化を象徴するかのようなコーナーとなっています。その豪華な作品のひとつが「色絵団龍唐花文八角皿(1690〜1710年代)」。染付に、はっとするような濃い赤、金の上絵が組み合わさり、これぞ元禄様式というような一品です。
ちょっと変わった形の器もありました。「染付鳳凰舟人物文菊花形皿(1730〜50年代)」という染付の作品です。よく見ると、皿自体が菊の花にかたどられています。「おそらくヨーロッパ製の金属器を模倣して生産されたものでは、と考えられています。」と家田さん。器面が波打っているにもかかわらず、丁寧な絵付けが施されています。
 またこのコーナーには、展覧会のポスターにも登場している「染付撫子牡丹唐草文段重(1700〜50年代)」もありました。作品が正面以外の角度からも見ることができるよう、鏡も置いてあります。「この作品は、裏面にも注目してください。」との家田さんのことばに目をやると、器の蓋と、重になっている器に連なって、丸い白抜きの部分があります。おそらく満月を表現したものとのこと。正面には秋の七草「撫子」、裏面には満月と、秋の風情をいっぱいに感じることができる、なんとも風流な器です。

 「今回の展示の中でも、資料的にぜひ注目していただきたい一品があるんですよ。」と大橋副館長から紹介されたのは「4.海外輸出の衰退と国内市場の開拓」コーナーに展示されている「染付菊花文嗽(うがい)碗(1730〜90年代)」という作品です。「菊の紋が入っているでしょう。これは京・朝廷より注文された製品だと考えられます。このような製品を注文していたという文献は残っていたのですが、この時代の完全な伝世品が発見されたのはこれが初めてです。」と大橋副館長。幕末頃のこういった注文品は残っているそうですが、1700年代の製品は今までも発掘品の中に破片などが出ていただけなのだとか。有田の辻家が生産していたそうで、たいへん貴重なものです。ところでこの「嗽碗(うがいわん)」とは何に使用されていたのでしょうか?これは女性の化粧七つ道具のひとつで、歯をみがいたりお歯黒をうがいするときに使用していたものだそうです。

 会場には若い人の姿も多く、熱心に鑑賞されていました。中にはメモをとったり、学芸員さんに質問する人も。今回は第四コーナーまでをご紹介しましたが、「行ってきました見てきました」次回へ続いてこの柴田コレクション展パート8の模様をお伝えいたします。

■展覧会ってどうやって準備するの?
華やかな展覧会がオープンするまで、いったいどうやって準備が行われているのでしょうか?うまか陶では、「メイキング・オブ・ザ・柴田コレクション展パート8」と題して、この展覧会準備期間中に突撃取材をいたしました。展覧会の舞台裏をどうぞご覧ください。

・「メイキング・オブ・ザ・柴田コレクション展パート8」はこちら→

●佐賀県立九州陶磁文化館

【所在地】西松浦郡有田町中部乙3100-1
【電 話】0955-43-3681
【駐車場】有
【休館日】月曜日(柴田コレクション展パート8会期中は無休)