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有田の今右衛門古陶磁美術館は平成9年の開館以来、春・秋に特別企画展を催しているが、いつも質が高く、見ればそのたびに啓発されることがあり、できるだけ欠かさず出かけることにしている。二階の一室が会場で、毎回五十数点という程のよい数の作品が展示され、それに混み合うということもなく、ゆっくり鑑賞できるのがうれしい。
今年の春の特別企画展は「鍋島・古伊万里変形皿展」(6月5日まで)で、大いに期待して出かけたが、期待以上の展覧会だった。
「変形」といえば、とかく奇を衒(てら)った物を想像しがちだが、今回の展示品に限ってはそんな印象はほとんどなく、形・絵柄・色遣いなどが精巧を極めながら仕上がりはとても自在で、優美さがあり、しかも品が良い。
例えば「色絵草花文変形皿」(古伊万里)は三角形の皿だが、文様と唐花文を全面に配した絵柄、色遣いが闊達(かったつ)で明るく、その素晴らしさにはただただ驚嘆するばかりである。「青磁銹染付葦文変形皿」(鍋島)は、縁が青磁で、銹と染付で葦文を描くという芸の細かさを示しながら、断じてうるさくなく、磁肌の白と相俟ってとても斬新で、三百年以上前の作品とはにわかに信じられないほどだった。「色絵唐花文変形皿」(鍋島)はほとんど完璧と言いたくなる逸品である。
染付で印象に残ったのは「染付蜘蛛(くも)の巣文葉形皿」(鍋島)。何かの葉っぱの形の皿に、蜘蛛の巣を描いているのだが、薄濃(うすだ)みを使うという凝りようなのである。また、「染付三壷文変形皿」(鍋島)は三個の壷の文様をそれぞれに描き分けて並べ、それを特異な形に仕上げて気品があり、「お見事」と言うしかない作品である。
これら五十数点がいずれも17世紀後期からの作品だというから驚く。有田で磁器生産が始まってから僅か数十年で、これほどまでの見事な品々を作った有田の職人たちの、腕の冴(さ)えと遊び心、センスのよさに圧倒されるばかりであった。
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