トップ >> 筒井ガンコ堂のガンコスタイル >> vol.4 有田焼を使った駅弁(2005年)

 先ごろ、JR九州が主催したのだったか、管内の駅弁コンクールで、佐賀駅で売っている「ちらし寿司」が2位に入ったと聞いて、他人事ながらうれしかった。実物は残念ながらまだ見ていないが、有田焼の容器を使用しているとのことである。
 もちろん駅売りの弁当だから、味そのものがおいしくなければ入賞するはずはないだろうが、ホンモノのやきものが使われているということが大きく点数を稼いだであろうことは容易に想像がつく。

 まだ東京で編集者をしていたころ、軽井沢に仕事で出かけるたびに横川(よこかわ)の釜めしを買ったことを思い出した。それは蓋つきの陶器に入っていて、弁当を食べた後、捨てるにしのびず、大事に家に持ち帰って、何に使うわけでもないのにとっておいたものだ。それに比べれば、件(くだん)のちらし寿司の容器は、丼鉢として利用できるだけ重宝というものだろう。

 いずれにしても、ホンモノの勝利と言えるのではなかろうか。
 先日、JR九州の肥薩線の特急「はやとの風」号に乗る機会があり、車内で予約しておいた「かれい川」という弁当を買ったのだが、その容器が竹皮を使った風流なものだった。食べ終わった後、捨てるのが惜しくて持ち帰ったが、筆箱にでもしようかと思っている。これもホンモノが物を言っているのである。

 そこでふと思いついたのが、弁当につきもののお茶の容器のことである。私が子供だったころは、赤茶色の陶器だった。いつの間にかそれがプラスチックになり、いまはペットボトル一色となってしまった。
 もうそろそろペットボトルに味気ない思いをしている人が多いに違いない。「ちらし寿司」や「かれい川」の先例もある。また、佐賀の嬉野や福岡の八女は茶どころとして知られる。しゃれたやきものの容器で、できるだけ廉価でうまいお茶が車内で飲めるよう、どなたかお考えになってはいかが、と期待している。

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photo ■筒井ガンコ堂
本名:筒井泰彦(つつい・やすひこ)
1944年佐賀県生まれ
平凡社にて雑誌「太陽」編集に従事。
佐賀新聞社で文化部長、論説委員など歴任。
元「FUKUOKA STYLE」編集長。
著書に「梅安料理ごよみ」(共著)、
「必冊 池波正太郎」等
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