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武雄の窯元で器を選ぶ筆者 |
佐賀県武雄市は「湯の街」で、JRの駅名にも「温泉」の文字が入っている。『肥前風土記』に記載されるほど古くからの温泉で、豊臣秀吉の朝鮮出兵時の傷病兵が多く湯治に利用したとの記録もあり、泉質は優れている。
この地はまたやきものでも「武雄古唐津」といって江戸時代を通じて、唐津系の陶器の一大産地だった。さらに明治・大正・昭和半ばまで、民陶として日常雑器を盛んに作り続けた土地だった。そして現在も、その伝統を受け継いだり、あるいは新しく現代性を採り入れたりしながら、熱心に作陶に励む個性豊かな陶芸家が少なくない。
しかし、残念ながら、温泉にしてもやきものにしても、長い歴史の裏打ちがあり、他に勝ったところがありながら、「武雄」の名が広く知られているとは言い難い。
というわけで、今年になって、街の活性化の一環として、温泉旅館で積極的に市内の陶芸家が作る器を使おうという企画が動き出した。温泉とやきものと、腕を揮ったおいしい料理を併せて楽しんでもらおうという企画だ。その手始めとして、旅館の主人や料理長に一日、協力を申し出た陶芸家の窯を実際に訪ねてもらうことになった。市内には、磁器作家もいるが、今回は取り敢えず陶器に絞るということだった。先日行われたその窯元めぐりに、同市の「温泉活用推進協議会」の委員に名を連らねる私も同行した。
一日で10軒。かなり強行軍となったが、行っただけのことはあった。個人的に知った陶芸家ももちろんいるが、そのような目的で見るとまた違った面が見えてくるのである。比較もできる。個性の違いが明らかになる。旅館主や料理長もそれぞれ知り合いがいたり、すでに使っている器もあったりしたが、一度に10軒を見て回り、使いたい器を選び、並べてみて、地元のやきもののレベルの高さ、その多様性に改めて驚いていたようだった。
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