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中島誠之助さんといえば、眼鏡に口髭、和服姿で古美術の鑑定人としてテレビに登場して、「いい仕事をしてますねえ」という言葉をはやらせた張本人だが、本来は親の代から続く東京のれっきとした骨董商。ご本人は特に古伊万里の目利きとして知られ、古伊万里を世に広めた功労者でもある。現在、古美術商四十年の経験を生かして鑑定の仕事をしているのである。
書店で見つけた中島さんの『ニセモノ師たち』(講談社)という本を興味深く読み終わったちょうどそのころ、小学館のPR誌「本の窓」の対談に登場しているのを見た。相手は中島由美さん、誠之助さんの長女である。略歴をみると、東京芸大の大学院修了で戸栗美術館(優れた陶磁器のコレクションで有名)の学芸員を経て、日本陶磁協会の権威ある専門誌「陶説」の編集に携わる研究員だとか。陶磁研究のプロなのである。
その父娘が、小学館が刊行中の週刊「やきものを楽しむ」を監修していて、そのPRのための対談なのだが、ちょっといい言葉があったので紹介しておこう。
由美さんが、現在の器を買うブームの中で磁器より陶器が人気があることに関して、
手間暇かかった職人の技よりも、へたでも土っぽいもののほうに引かれることがあるらしくて、これはちょっと嘆かわしいですね。
と話すと、誠之助さんは、日本人が作り得た磁器の最高峰として、大正から昭和中期に活躍した名工・板谷波山(いたやはざん)の名を挙げながらも、
ただ、今、有田などに行くとすごい作品もあって、粘土で桃山時代に独特のものをつかんだのと同じような動きが、磁器の世界にこれからはでてくると思う。
と、有田の陶芸界にとっては、とても励ましになるようなことを話している。豊かな伝統をきちんと踏まえながら、現代に生きるやきものを作ることに挑戦している人たちへの力強いエールである。
ちなみに週刊「やきものを楽しむ1 有田・伊万里焼」では、「工房を訪ねて」で、十四代今泉今右衛門さんと岩永浩さんを紹介している。取りあえずは、中島さん父娘のお眼鏡に叶ったお二人ということだろう。
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