わが家で毎日使っている食器はほとんどが染付(そめつけ)である。日常的に使うのは持っている食器の一部で、食器棚にはちょっとした小料理屋が開けるくらいの量のやきものが納まっている。そのうち約八割が染付ではなかろうか。あとは白磁、色絵、土もの、洋食器である。
これは単純に趣味の問題で、私たち夫婦がそろって染付が好きだということを示している。お互いの実家から持ってきた物も少しずつはあるが、ほとんどは私たちが三十年かかって買い集めた物だ。むろん、いくら好きでも高価な骨董品などには手が出ないので、手頃な値段で買ったものばかりである。然るべき店で若い作家の品などを教えてもらったり、大量生産の品でも、気に入れば買ってきた。それらの多くが結果的に染付だったのだ。
染付とは、専門的には用心深く、難しく定義されているようだが、一般に分かり易く言えば、磁器の白い肌に藍色だけで文様を施したものをいう。藍色は呉須(ごす。コバルトのこと)の発色による。中国の元(げん)朝末期に景徳鎮(けいとくちん)で完成されたといわれ(中国では青花<チンホワ>と呼んだように記憶している)、日本では江戸初期に肥前・有田で創製され、やがて各地に伝播したとされている。
なぜ染付が好きか。「やきものの趣味は染付に始まって染付に終わる」といわれるが、私はそれほどの好事家ではないので、口幅ったいことは言えない。
ただ、白と藍という組み合わせが端的で、さわやかなのが好ましいと思う。次に、使っていて、器を意識させない、つまり料理の邪魔をしないということがある。そして、飽きがこない。
多くが今出来の物だが、それでも、絵模様の上手下手、藍の発色の濃淡などさまざまで、おのずと好みが絞られてくるから不思議である。こうして、少しずつやきものの世界に深く入っていくのだろうと思っている。
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