トップ >> 筒井ガンコ堂のガンコスタイル >> vol.6 「陶」のルーツ(2002年)
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 ふと思いついて「陶」という字を辞書で引いてみた。私たちは何の疑いもなく「やきもの」のこととみなしているが、では「陶酔」とか「薫陶」とかの場合の「陶」とはいかなる意味なのか?「鬱陶」の場合は?
『大漢語林』を引いてみた。

 まず、「解字」で漢字のなりたちをみると形声文字で、意符の)と音符のとから成っている。音符の(タウ)は、やきものを焼くの意味、は階段の象形で、結局「陶」は「階段のついたかま場で、やきものを焼くの意味を表す」と説明してある。やはり、もともと「やきもの」に直に関係ある字であったかとホッとした。

 次に「字義」をみると、「すえ。せともの、やきもの。陶器。 せとものを作る。 せとものを作るように事を行う。変化をさせる。<陶冶>人を教え導く。教化する。<薫陶>やしなう(養)。 よろこぶ(喜)。また、のびる(暢)。<陶酔> うれえる(憂)。悲しみ思う。<鬱陶>(以下略)」とあった。漢字とは随分と意味の広がりを持つようになったものだと改めて感心した。

 念のために、「陶」の旁(つくり)の「」を同じ辞書で引いてみると、これは象形文字で、「人が陶器をかかえている形にかたどり、陶器を作る意味を表す」とあって、「字義」は「土をこねてやきものを焼く。また、そのやきもの。陶器。 かま。焼きものがま。」と説明してあった。
 ということは、つまり、「陶」は「」より後にできた字で、しかも「階段のついたかま場」で焼かれるわけで、これは中国に古くからある傾斜地を利用した穴窯や龍(蛇)窯を連想させる。言ってみれば、「」は土器で、「陶」は陶器に相応するわけだ。

 白川静著『字通』では「」「陶」とも少し異なった説だが、いずれにしても「陶」の一字から、やきものの起源がいろいろに想像され、実に興味深いことであった。

※使用画像 肥前磁器窯跡(国指定史跡)
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photo ■筒井ガンコ堂
本名:筒井泰彦(つつい・やすひこ)
1944年佐賀県生まれ
平凡社にて雑誌「太陽」編集に従事。
佐賀新聞社で文化部長、論説委員など歴任。
元「FUKUOKA STYLE」編集長。
著書に「梅安料理ごよみ」(共著)、
「必冊 池波正太郎」等
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