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有田の街への東の入り口に当たる所に、通りに面して「土の器」の看板を掲げた店がある。看板そのものは仰々しくはないが、有田=磁器と認識している人たちには十分刺激的である。店主はよほど挑戦的で、つむじ曲がりの人物ではないのか。が、実際に会った店主、松永敏憲さん(58)は、やきものを「売る」ということを真剣に考えている、きわめて平衡感覚のとれた人だった。
扱っている作家は三十人ほどだが、いずれも協会などに属していない、若手から中堅にかけての人で、松永さんが、ずっと付き合っていけるかどうか、人物本位で選んだという。
磁器を避けているわけではなく、いまのところ扱いたい作家がみつからないのだとか。それより、土ものを焼いている若い作家を扱う商人がいないのが不思議で、いきおい土ものを主に扱うようになったという。
店内に所狭しと並ぶ商品は、皿、小鉢、湯のみ、ぐいのみ、花器、コーヒーカップなど比較的小物が多い。一個一個値札が付いているが、作者名はない。作品の評価ではなく、名前で売れることを嫌う松永さんの方針である。
商品であるから当然、松永さんの作家に対する要求は甘くない。器の「用」ということは最低の約束事で、急須がきちんとつくれるかどうかが目安だという。土ものというとややもすると素朴、自由さ、奔放さなどを喜ぶ向きがあるが、それが作家の技術の甘さをカバーするものであってはならない、と厳しい。
この店での小売りと、山陽道、大阪などの小売店への卸しをやっているが、それほど儲からないとのこと。ただ、作る人、売る者、買う人すべてが満足というのが理想で、若い作家と歩みを共にし、一人でも多く世に出していく(飯を食べられるようにする)のに喜びがあると言い、「こんな店が一軒くらいあってもいい」と、松永さんは屈託がない。
●土の器
【所在地】佐賀県西松浦郡有田町本町
【電 話】0955-42-4047
【交 通】JR有田駅より徒歩6分
【駐車場】有
【店休日】毎週月曜日(祝祭日は営業) |
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