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やきものにみる文様VOL.5 四方襷文様(よもだすきもんよう)



 襷(たすき)はもとは上代に神事奉仕の物忌みのしるしとして肩にかける清浄な植物繊維の紐のことであり、のちに仕事をする時に和服の袖をたくしあげるために両肩から両わきへ斜め十字形になるようにかけて結ぶ紐を襷という。複数の平行斜線を交差させたものを襷文様といい、それを構成する一単位が発展したものが菱文様である。襷文様は単純な図形であり、世界各地の原始文様にみられる根元的な幾何文様の一つである。

春秋時代の土器、後漢の陶器、呉、西晋の越窯の作品に古い例がみられる。交差する平行斜線に囲まれた枠内に四角形をうずめ、その各四辺に細い切り込み線を入れて四弁花にみせる。これをとくに四方襷(よもだすき)文とよんでいる。この四方襷(よもだすき)文は器体の一部の連続文様として、あるいは主題となる絵文様をひきたてる背景の充填文様として、14世紀中頃の元の青花(染付)に用いられて以来、明時代の青花、釉裏紅、古赤絵、五彩、呉須赤絵、金襴手などの作品の一部にみられ、それが古伊万里や古九谷の背景地文に応用された。
(吉永陽三)

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佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No.5号より(昭和58年発行)

■写真…色絵牡丹窓絵樹木文皿(柴田コレクション)
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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