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やきものの技法VOL.24 釉薬による熔着


 釉薬はやきものの表面をガラス質のもので覆うことで強度を増し、またやきものに光沢を与えて美しくする。このような釉薬の役目の他に、釉薬によって接着する技法がある。複雑な形態のやきものは、部分を別々に作り、生乾きの時に接合する。この場合の接着剤は粘土である。その後乾燥させて素焼きをし、全体に釉薬をかけ焼成する。ところが江戸時代の有田磁器には、釉薬を接着剤として用いる技法がある。別々に成形されたものに個別に施釉を行い、窯詰めの時に組み合わせ、焼成後の冷却によって釉薬が硬化し熔着する。これによって成形時には完成していない形態が出来上がる。

 写真の香炉は、透彫(すかしぼり)のなされた外器に筒型の内器が差し込まれ、釉薬によって熔着したものである。外器と内器の接点は、口部と底部である。これらの部分は、通常見られるような接合部特有の撫(なで)跡がなく、釉薬のみによって接合されている。七宝文の窓から内部を見ると、内筒に染付で竹文が描かれている。小さな透かしの窓から文様を描くのは不可能であり、筒形の内器を外器にはめ込む前に文様を描いたと考えられる。この香炉は1630〜40年代に制作されたものであるため、釉薬による熔着はかなり早い段階から行われていたことが分かる。

 17世紀後半においても、数は少ないが釉薬による熔着は引き続いて行われている。筒形で高い高台の台皿に、高台部と皿部を熔着したものがある。施釉後高台部に皿部を乗せただけで焼成したものである。乗せ方が悪いと高台部の中央に皿部がうまく乗らず、中心からずれた熔着となる。


(鈴田由紀夫)
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No34号より(平成10年発行)

■写真…染付透彫七宝繋文香炉
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
柴田夫妻コレクション
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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