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やきものの技法VOL.2 印版(2)―型紙絵付け―
 型紙絵付けの技法は単に摺絵(すりえ)とも呼ばれるし、型紙摺りあるいは型紙捺染(なっせん)法とも呼ばれる。肥前地方では合羽(かっぱ)摺りの方が一般的だ。名称は様々だが、いずれも文様を切りぬいた型紙を器面にあて、その上から筆や刷毛で絵具をすりこむ技法をさしている。

 型紙が陶磁器の絵付けに応用された例は、美濃地方では17世紀後半頃の御深井(おふけ)様式の製品が最も早いとされる。この場合絵具は鉄であり、褐色の草花文や小紋が絵付けされている。古唐津においても鉄絵具の型紙絵付け陶片が発見されており、量的には少ないが江戸前期には肥前地区でも陶器に型紙が使用された例を見ることができる。また絵具ではないが、白い化粧土を用いた型紙刷毛目※1の古唐津製品もあり、技術的系譜を研究する資料として注目されている。

 型紙が、磁器製品に染付というかたちで使われたのは18世紀以降と思われ、宝永7年(1710)の箱書きがある古伊万里ものこされている。美濃や肥前で一時的に流行したこの手法は、江戸後期には姿を消した。しかし明治前期に復活し、全国の磁器窯で盛んに用いられた。九州では肥前地区はもとより、天草の高浜窯や薩摩の平佐窯でも用いられている。
 型紙絵付けは、複雑な文様でも型紙を一旦彫れば、耐水性のある紙は丈夫なため何回でも使え、その絵付けは簡単で早い。製品は大量生産の日用品がほとんどである。明治時代に大流行した型紙絵付けも、銅板転写の登場によって大正時代には衰退した。

 写真の火鉢は口径21.7cm、高さ20cmの染付磁器である。絵付けは頸部のベタ塗りをのぞくとすべて型紙摺りで、青海波(せいがいは)・牡丹に扇文・雷文・蓮弁文※2の4種の型紙が使われている。これをくりかえして絵付けされるが、雷文と蓮弁文には型の重なりがみられ、これから一つの型紙の大きさがわかる。拡大写真では、型紙絵付けの特色である破線と刷毛のタッチ(花弁の横縞。縦縞は素地の仕上げによるもの)がみられる。
(鈴田由紀夫)
※1 刷毛目についてはこちら→
※2 青海波、雷文についてはこちら→
佐賀県立九州陶磁文化館報
セラミック九州/No.2号より(昭和56年発行)

■写真…扇に牡丹文火鉢
C佐賀県立九州陶磁文化館所蔵
■編集・著作…佐賀県立九州陶磁文化館
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