これは担い屋台による、二八そば売りの店の様子を描いたものです。そばを食べ終えたと見られる男性は、手に染付の碗を持っています。碗の外側には唐草文、見込みの縁にも文様が描かれています。同じ碗が画面右側の、店の棚にもいくつか収納されています。その棚の下には木樽のなかに陶器のような瓶が収められています。調味料あるいは水を貯えていたのでしょうか。
江戸の町では屋台は種類も豊富で、今で言うファーストフード店として大変人気があったようです。絵に描かれている「二八そば」は、代金が16文(2×8=16)だからとか、小麦粉と蕎麦粉の混合割合が二対八だったからと伝えられています。そばの他にも、天ぷらやおでん、団子、稲荷寿司などの屋台があったそうです。
ちなみに題名にもなっている「鬼あざみ清吉」というこの男性は、すり抜けの名人として有名だった江戸後期の大泥棒です。 |