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Vol.38 |
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日本の名随筆別巻71「食器」
■発行所
作品社
■著者
増田れい子 編
■定価
1,800円
■ジャンル
随筆集 |
1982年からはじまった「日本の名随筆」シリーズ。花、酒、異国、怪談などさまざまなテーマの随筆を一冊ごとに収録しています。今回ご紹介するのは別巻71「食器」。谷崎潤一郎からはじまり、宮尾登美子、白洲正子、辻嘉一、北大路魯山人など著名な小説家・料理研究家・陶芸作家など37名の随筆が収録されています。食器という切り口ひとつから、さまざまなドラマや歴史を楽しめ、よみごたえのある一冊です。中には少し前の時代に書かれたものもあり、現代の私たちには馴染みの少ない生活風俗や家庭の常識のようなものにも触れることができます。
その中でも興味深いのが、随筆家で女優の沢村貞子氏の「男女同量」。あるとき陶器店へ行くと、男女同じ大きさの夫婦茶碗が並んでいた。沢村氏はそのお茶碗を自分用に購入し、男と女が同じ大きさの茶碗であるということに、喜びを感じる。そこには、明治生まれの彼女にとって、「男女同権」が「男女同量」のお茶碗にあらわれているという感覚があったからだという。しかしそのお茶碗で、食事をしていた彼女は、いつもよりつい多めに食していただけに、体調をくずしてしまい、「夫と同じ大きさの茶碗を使っているけれど、自分の健康を保つためには、どのくらいの量をよそったらいいか。私自身がよく考えてキチンときめなけりゃあ」と反省する。読後、お茶碗のなかに何やら時代の縮図のようなものを見せられた気分になります。
この他にも小説家・塩野七生のこだわり「銀器をめぐるお話」、タレント黒柳徹子の思わず吹き出してしまいそうな勘違い話「わんこそば」などが収録されています。この本と同シリーズの日本の名随筆
5「陶」もあわせて読んでみたいもの。
■関連リンク 日本の名随筆 5「陶」
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